à la carte_焚き火

昭和30年代の東京。
私の子どもの頃には、「垣根の垣根の曲がり角」の歌詞さながらに、焚き火を囲む人たちがよく見られた。子どもだった私も、火に呼び寄せられるように焚き火を囲んだ。
炎というのは、不思議なものだ。青みがかった朱色が、温かなみかん色に、勢いがつけば血のような紅色もひるがえる。美しいと思った。怖いとも思った。火を見ていると、鼻の奥がつんとなって、涙がでそうだった。おじさんが灰を取り、水をまくまで、じっとしゃがんで見ていた思い出がある。
すっかり大人になってしまった今、言葉にすれば、それは生きてあることの懼れであり、淋しさの芽であったような気がする
子どもの苛め、自殺、虐待のニュースに触れるたびに、胸の痛みとともに思う。高度経済成長の名のもとに、木や土や水を傷めてきた大人たちの罪を。そして、生の懼れや淋しさを知らずしては、生を愛することも出来ないということを。(栄順)
