今月の料理(十二月)_蓮根のチーズ焼
地方には全国に名の知れた名産品が多くありますが、地元で消費されてしまう言わば隠れた名産品も多くあります。
新潟市郊外の五泉市は阿賀野川とその支流早出川が形成する堆積地にあり、菅名岳の伏流水に恵まれた所で、その名の通り水の良いところです。ここは長岡の大口と並ぶ蓮根の産地で、その水の良さが育てた蓮根の味はもとより、色の白さが際立っています。
11月に入ると葉も実もすっかり枯れ落ち、茎ばかりとなりとなった蓮田は、放たれた矢が何百本も地面に突き刺っているような荒涼とした風景です。蓮根はポンプで水圧をかけて泥を除き、ホースで蓮根を下から浮かせて収穫します。胸まであるゴムの作業着と長靴、肩の近くまである長い手袋をはめ、水中の蓮根を掘り出します。掘り出した蓮根のうち、一部を折って投げ捨てたり、丸ごと一本を捨ててしまったりと、随分ともったいない感じです。が、聞くところによると、煮ると黒くなってしまったり、疵があったりと商品にならないのだそうです。しかし素人の目には全くわかりません。捨てられた蓮根は来年の肥料になるそうで、この作業はお正月に向けての出荷まで続きます。時雨れる中の蓮根堀は「本当に辛いっすよ」と一言。頭が下がる思いです。
帰ろうとすると、泥水の中から見事な蓮根を一本差し出されました。田の脇の真水で洗うと象牙色の美しい蓮根が現れます。節と節の間からはもう芽が出ています。蓮根には乾燥が禁物。濡らしたまま持って帰りました。
蓮根堀を見に行っていただいた蓮根。掘った方の苦労を考えるとおろそかには出来ません。皮を剥くと見事な白さです。早速、煮物に蓮根餅にと調理。でもまだ残っています。そこでオリーブオイルをフライパンに敷き蓮根を焼いて、冷蔵庫にあったパルメザンチーズをこれでもかと言うくらい摩り下ろしてその上にかけて頂きました。
掘りたての蓮根の甘さと溶けたチーズが香ばしく、頂いたボージョレ・ヌーボーの良い肴になったのは言うまでもありません。
一艘の舟を浮かべて蓮根掘り 善子
【作り方】
蓮根は皮をむき2.3センチの厚さにきります。
熱したフライパンにオリーブオイルを敷き、蓮根を焼きます。
軽く焦げ目がついたら、胡椒をしてチーズを摩り下ろします。
蓮根の周りのチーズが溶けて、カリカリになったら出来上がりです。
【材料】
蓮根
チーズ
胡椒 オイル