クルクマ
盛夏を迎えると、花をいけても暑さですぐにしおれてしまいます。玄関にいけた花の器に指を入れると水が暖かくなっていた、などということもあることでしょう。
そんな時のお勧めがこのクルクマです。クルクマ草ともいい、原産地は東南アジアなので暑さもなんのその。色は薄いピンク、濃いピンク、紫に近いようなもの、緑や白など、鮮やかな色調で元気いっぱいに咲いて花やさんにでまわります。花のように見える部分の高さは15センチ前後ですが小ぶりなものもあります。ショウガ科に属し、文字通りショウガという言葉を含むレッドジンジャーや、げっとう(月桃)もその仲間です。
クルクマとは属名で、ターメリックと呼ばれる根がカレー粉の原料になる鬱金もクルクマ属で、鬱金でそめられた黄色の風呂敷は何か大切なものを包むときに使われるので、お近くにあるかもしれません。
クルクマは、粉が吹いたような緑色の葉をつけますが、特徴的なのはすっとした茎につく花の形です。花といいましたが、じつは花びらのようなものは苞です。苞はふっくらしていたり、先が少しフリルになっていたり、ピンクの先に緑色が入っているもの、グリーンで褐色が入ったものなどがあります。茎に近い緑の苞の中をのぞくと、白と薄紫色で、ごくたまに薄ピンクの小さな「本当の」花が見えることでしょう。
タイに行った時、町でもこのクルクマをよくみかけました。
切り花として各所で飾られている色とりどりのものはもちろんですが、花の装飾文化を紹介するミュージアムの、元は個人の住宅だったその館の庭のすみで、旺盛なエネルギーを発散する熱帯の木々のもとにひっそりと咲いていた薄ピンクのクルクマも印象的でした。
この夏は日本中がかつてない暑さとなりましたが、気候により咲く花も変化していくことでしょう。日本では数年前まではそれほどみかけなかったクルクマですが、いまは色や形が多様化して登場しています。それがもし地球の温暖化に関係あるとすれば、一概に私たちは喜べないのかもしれません。ともあれクルクマに罪はなく、元気に夏を乗りきろうと私たちに無邪気に呼びかけているかのようです。(光加)