フォックスフェイス
秋の実の中でひときわ鮮やかな黄色が目立ち、つややかな表皮を誇っているフォックスフェイス。枝のまわりに黄色い大小のふっくらとした実を数個ずつ付けます。実の元にはあたかも小さな耳のような部分もあり、フォックスフェイス、狐の顔と呼ばれているのも納得できるでしょう。この名前は日本でつけられたといわれますが、日本人には昔からいろいろな話の中に狐が登場するので、どこか親しみがわくのでしょうか。
子供のみならず、手に取った人の中には筆ペンやマジックインクをもってきてこの実を顔に見立て眼や口を描いたりするのです。
花はナスの花と同じような大きさと形で栽培農家は太陽を好む実の色をよくするため、ある程度に成長すると周りの葉を切るということです。実の色が薄い緑からオレンジ色がかった黄色に近くなってくると切り取ります。水を飲ませなくてもすぐ萎んでくることがないので、黒い斑点がでてくるまで一か月以上、水の心配は無用です。
初めていけたときから、その色といい形といい、豊かでどこかありがたいイメージがありました。冬に向かう寒さを少し感じ始める季節に、お稽古で手にするからなのでしょうか。
英語ではnipple fruit と呼ばれ、直訳すれば乳首の果実。確かに全体の形は黄色い乳房を連想させます。子孫繁栄、五穀豊穣にも通じていくようです。
中国出身の知人に尋ねると、中国では「黄金果」と呼ばれるフォックスフェイスは広東ではお正月に家の中に飾られるそうです。五代同堂ともいわれ、一家団欒の象徴でもあることを教えてくださいました。添えられていた写真を見ると、皿に実だけがたくさん円錐状に高く盛られたものがいくつも並べられて売られていました。
おおらかで、ユーモラスで、暖かいフォックスフェイスの原産地は熱帯アメリカといわれていますが、そこでも人を楽しくさせていたのでしょうか。
しかし角なす、カナリアなすなどの別名が示すように確かにナス科ですが、実には毒があります。母性を感じさせる形に反して食べることはできません。
今年もあますところ数か月という町のどこかで、だんだんと膨らんで鮮やかな色どりをそえつつあるフォックスフェイスをそろそろ見かけるころです。(光加)