カフェネット投句(12月)飛岡光枝選
【特選】
毛糸玉ころがる先に毛糸玉 周作
解き直した毛糸をいくつかの玉にしているのか、幾色かの毛糸で編んでいるのか。仔猫たちがじゃれ合うような毛糸玉の様子に幸福感が漂う。
いつの日か君は羽化してカトレアに 隆子
仙人ならずカトレアになって匂い立つ人。若者(女性?)への贐のことばにふさわしい一句。
四角なる餅もまあるく膨らんで 涼子
本当に丸くなるわけではない。楽し気に餅を焼く人の心持がいい。
【入選】
切るならば切れと鮟鱇睨みけり 弘道
鮟鱇は陸にあがるとだらしなくなってしまい、句のような精悍な様子の鮟鱇にはあまりお目にかからない。
年の瀬や都大路を足早に 弘道
特に新しい内容ではないが「都大路」という古風なことばが効いている。
難民の空へ飛びゆく毛布あり 隆子
一枚の毛布に命をつなぐ人々。
カトレアを胸に新婦に並び立つ 涼子
このままでは状況説明。「カトレアを胸に新婦の母となり」。
【投句より】
襟巻は狐や鼻のこそばゆく
「襟巻の狐の鼻のこそばゆく」。同様の切れ字の使い方がこの作者の句には時々見受けられる。一考を。
呟きてひと色選ぶ毛糸玉
この「呟きて」はわからない。もっと具体的に。