朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」5月
朝日カルチャーセンター「カフェきごさい」句会。今月の兼題はサイトより5月の季語「端午」料理「新茶」花「都忘れ」です。
【特選】
馬穴手に富士見る人や磯遊び 周作
雄大な富士山のおひざ元での磯遊び。潮干狩りなどに没頭していて腰を伸ばそうと立ち上がると眼前に大きな富士山が。言葉が過不足なく使われているしっかりした一句。
薔薇風呂に老の身しづめ眼とじる 稲
ある凄まじさを感じさせる。そこに集約するように作りたいところだが、「眼とじる」が余計。「薔薇風呂に老いぼれし身を沈めけり」。
かまきり生るいのちのいのち風に舞ふ 稲
わらわらと蟷螂の子が誕生する様子。「いのち風に舞ふ」が普遍的な思いを伝える。「いのちのいのち」がわかりにくい。「かまきり生るいのちやいのち風に舞ふ」など。
樟の木の若葉あふれて雨を待つ 守彦
樟の木ならではのすがすがしい作品。「雨を待つ」に樟の木の香りまでが思われる。
【入選】
朝靄の晴れればみえて茶摘笠 隆子
「晴れれば」がうるさい。「朝靄の晴れて動くや茶摘笠」など。
朝まだき囀り敲く雨戸かな 周作
囀りに囲まれている朝の感じはあるが、囀りが雨戸を敲くとは少々大げさ。
流鏑馬の音の決まりて的中す 涼子
的中する時の音の表現が「決まりて」ではよくわからない。もっと具体的に。
初鰹まずは包丁研ぎにけり 弘道
初鰹にうきうきする心持ち。「まづは」。
麦の穂や裾野に浮かぶ観覧車 周作
麦秋の向こうに回る観覧車の景色がいい。「裾野」「浮かぶ」がわかりにくい。観覧車であれば「回る」など、素直に表現すること。
梅の実の落つれば貰ふ散歩道 今日子
青梅の頃の静かな散歩の様子。「貰ふ」は心情が入るが句が限定され、「拾ふ」とするともう少し広やかな世界になる。
雨あがりふるへ止まらず花菖蒲 光加
雨の花菖蒲を繊細に描いた。「雨上りふるへ止まらぬ花菖蒲」。
蓮の池青葉一枚ふるへたり 今日子
こちらは蓮の池。「蓮の池浮葉一枚ふるへたり」。
田水張り山又山の信濃かな 守彦
しっかり出来ているが、今までにたくさん作られた句の域を出ていない。
蕗味噌は母の味なり握り飯 弘道
蕗味噌が母上の味というのはあまり新鮮味はないが、「握り飯」で存在感が出た。
まず母に供へん宇治の新茶くる 弘道
形はできているが(これは大切)、内容も宇治の新茶も少々当たり前。「まづ」。
都忘れ野良猫の尾にくすぐられ 光加
情緒が先行する「都忘れ」を、本来の野にある花としてとらえた。猫のしっぽにくすぐられるとは愉快。
ざあざあと菖蒲湯の湯を落としけり 光枝