カフェきごさいネット投句(十月)飛岡光枝選
五島列島あたりの教会か。「秋の波」とすると石の教会を洗う波が見え句にも動きがでる。
文字揺れし姉の便りや秋日和 弘道
姉上を気遣う思いがより活きる季語を。「文字揺れる姉の便りや菊日和」。
淡いあはい我が影法師後の月 涼子
「淡いあはい」では「後の月」の本意である冷ややかな感じが出ない。「ひとつある我が影法師後の月」など。
ほつこりとなりし悩みや栗汁粉 涼子
よくわかるがわかり過ぎる。「なつかしくなりゆく思ひ栗汁粉」など。
蛇穴に入りてしづもる三輪の山 隆子
三輪山伝説。伝説に頼らずより大胆な句にした方が面白い。「蛇穴に入りてしづもる阿蘇の山」など。
天人の見おろしてゐる松手入 隆子
天人の目線とは、松手入らしくかつ新しい。が「見下ろす」という天人に引きずられて据えたことばが句を小さくした。「天人のながめておはす松手入」。
鎌研ぎし砥石の凸み秋の雲 周作
砥石の凸みの細かさと「秋の雲」が分裂している。「草刈りの鎌研ぎあがる秋の雲」。秋の雲の下での草刈りに思いが飛ぶ。
【投句より】
「古書店や青春に会ふ秋の風」
「秋の風」がとって付けたようになってしまいました。「会う」などの説明はなるべく省きたい。「古書街やわが青春の秋の雲」。
「壁に画鋲錆びて残りし冬隣り」
「画鋲錆びて壁に残りし今朝の冬」。語順を工夫しすぎると伝わる力を弱める場合があります。この句には「冬隣り」より緊張感がある季語を。