今月の花(八月)桔梗
秋の木の実の場合だと中に何がはいっているか、種はどんな形か見てみたくなり、指先でつぶすということはあります。それに比べてこれから花開く蕾をつぶしてみたいというのはどう考えても許されるとは思えません。
桔梗の蕾は上から見ると五角形です。横から見ると風船のようで、どこかで見た形だと見つめていると空に浮かぶ熱気球を思い出しました。英語名のひとつは風船をさすballoon flowerです。中心をきちんと閉じた蕾の中は雄蕊や雌蕊のほかは空気しか包んでいません。紫の花がどこか透明感があるのはそのためでしょうか。繊細で上品なこの花の蕾はやがて開くと先端は五つにわかれます。
山上憶良の詠んだ秋の七草の最後に挙げられる朝顔の花が、実際はどの花かいろいろな説がありますが桔梗という意見が大半です。野にある桔梗に出会える機会は年々少なくなっていますがその代りに園芸品種は早くから作られ、白、薄ピンク、八重咲、また斑入りや丈の短いもの、平らに開くものなど様々です。高さは1mにもなることがあり、葉は細い卵型で、裏はやや白く 花のついている先端の茎は細く花は横を向くか、やや下を向いて咲きます。
日本の家紋は植物が多く、そのひとつに桔梗紋があります。五角型の花の形は紋のデザインにもってこいなのでしょう、多くの知名人もこの紋を用い、明智光秀はその一人。加藤清正や太田道灌や大村益次郎の家紋は桔梗をもとにしてデザインされています。
古くは陰陽師として知られる安倍晴明の晴明桔梗紋で、晴明神社にはこの紋が見られます。デザイン化された紋は星の形のようです。五芒星(ペンタグラム)といわれるこの印は魔除けともいわれエチオピアやモロッコの国旗にも似たような形がとりいれられています。これらの国には桔梗はあるのでしょうか。
平昌オリンピック、フィギュアスケートで連続優勝をなしとげた羽生結弦選手の振り付けは、この陰陽師、安倍晴明をテーマにしていました。そういえばすらりとした姿、長い首、透明感のある羽生選手にどこか桔梗のイメージを重ねるのは私だけでしょうか。(光加)