きごさいカフェネット投句(7月)飛岡光枝選
どこの家でも父、長兄の座がおのずから決まっていた時代。その良し悪しはあるだろうが凛とした佇まいはこんなところから身に付いてきたのだろう。「釣忍」がその時代の空気をも表している。原句は「兄の位置占めし座敷や釣忍」。
夕顔の開く吐息をもらすかに 隆子
原句は「夕顔の咲くは吐息をもらすかに」。「咲くは」では説明的であると同時に、「吐息」から遠くなる。夕顔の花はそのイメージより野趣ある花。掲句には開きはじめを思わせる「開く」が相応しい。
香水の瓶にいづこの森の鳥 隆子
どこからか飛んできた鳥が瓶に止まったかのよう。深い森の香りの香水なのかもしれない。原句は「香水の瓶のいづこの森の鳥」。
濃き影に光よぎるや瑠璃蜥蜴 勇美
真夏の真昼間の一瞬を捉えた。原句は「濃き影に光よぎれり瑠璃蜥蜴」。
【投句より】
(青色が良いという子とかき氷)
一物仕立ての句では句の中に発見や驚きがなくてはいけませんが、この句は事実の説明だけになってしまいました。「青色をけふは選ぶ子かき氷」など一歩踏み込みたい。「いう子」は「いふ子」。
(夾竹桃旅の終はりを彩れり)
晩夏にかけて咲く夾竹桃に「旅の終はり」の感じがありますが、「彩れり」では具体性がなく弱い。より具体的に。
(花つけて茘枝は天をめざしけり)
「花つけて茘枝は天をめざしゆく」。今まさに目指している動きを出すようにしたい。