à la carte_連翹(もくせい科)
春は黄色の花が連れてきます。
一月の初め、極寒のフィンランドで花市場に行ったとき、バケツの中に連翹を見つけました。勿論、海まで凍りついているフィンランド産のわけはなく、多くの花たちと一緒にオランダから輸入されるのです。かといって、この季節はオランダだってこの花が咲くほど暖かいわけはなく、もっと南の国からの輸入なのでしょう。長い旅をしてここまで春の訪れを知らせにきてくれたのです。
年末の蝋梅、新年になって咲くさんしゅゆ、この連翹、そしてまんさくと、枝に咲く黄色い春の花はその周りの空気をぐっと華やいだものにしてくれます。
連翹は枝が中空なので、いわゆる矯めがきかない花材でそのままいけます。中にはそのままで繊細な曲線をもっているものもあります。花が終わって初夏になり、やがて花屋に枝ものが少なくなっていくと、花の代わりに奇麗な緑の葉をつけた連翹が稽古に登場します。
春が進めば、道端でも連翹はみかけられます。以前、韓国の日本大使公邸には連翹がたくさん植えられていて、ちょっとした連翹の小道のようになっていました。今はどうなっているのでしょうか。連翹は中国が原産です。
アラブ首長国連合に行ってワークショップをしたとき、枝は連翹なら手に入りますよ、と言われました。宗教上の理由で、アバヤという黒い衣服を身にまとった夫人たちもたくさんいるなか、みなさん連翹を手にし、おしゃべりをしながら楽しそうにいけていました。小さな黄色の花が黒のなかで舞っていました。日本よりずっと暖かい国で、その黄色はいっそう鮮やかさを増したように思えたのでした。
連翹は、平和な光景がひときわよく似合います。(光加)