今月の花(四月) 山葵
お取り寄せで利用する修善寺の湯葉やさん。湯葉をひきたたせる山葵は葉つきのものを注文します。やわらかい曲線を描く茎についている薄緑の葉が、春の陽のぬくもりを感じさせます。山葵はアブラナ科に属し、緑の葉に映える小さな白い花は同じアブラナ科の菜の花に似ています。
山葵田のまわりは空気も爽やかで、流れ行くせせらぎの音に思わず耳を澄ませます。生育には豊富な伏流水のような清らかな水を必要とするのです。この環境の中で育っていく山葵はあたりのすべてを浄化し、食用すれば殺菌作用があるのは当たり前と思えてきます。山葵田で山葵を育てるのには十~十五度あたりの一定の温度が必要で、暑ければ日差しを遮るなどして育てます。
「お子さんには山葵はぬいときましょうね」と寿司職人が声をかけます。つん、と鼻に来る山葵は子供には刺激が強く食べさせてはもらえません。いわゆる(さびぬき)ではないお寿司がいただけるようになった時、お蕎麦にはなくてはならないものとなった時、山葵漬と暖かいご飯の組み合わせはやっぱりいいと思った時、金気を嫌うといわれているのでセラミックの器具を使って山葵をおろせばこれでやっと通な大人の仲間入りという気がしたものです。
山葵とひとくくりにしますが 清流が育む沢(本)山葵に対して畑山葵があり、これは水を使わない栽培方法で畑でつくられるということです。
山葵漬に代表されるように山葵は根はもとより葉、花、茎も食べられる日本原産の世界に誇れるハーブのひとつです。世界各国のシェフも「WASABI」と日本語をそのまま使います。日本の国際線のコンコースではチョコレートをはじめとして、山葵入り、または山葵風味と書かれたスイーツや食品が外国人にも人気です。
日本のお土産は何がいい?と聞くと、長い間の門下生であるフィンランド人のリーサは「チューブ入りの山葵マヨネーズ」といって私をびっくりさせました。現地にも輸入されているけれど日本から直接のほうが賞味期限が長いものが手に入るので、ということでした。ホースラディッシュでは代用できないピリッとした独特な味が素晴らしいというのです。リーサは続けて「重ければ山葵の味付け海苔ね」。時には外国人に教えられる、日本の味です。(光加)