カフェネット投句(四月) 飛岡光枝選
幼いころの体験かもしれません。春の愁いを思い起こさせる一句です。地面を蹴ったので「蹴り」としたのかと思いますが、文字だけで句を解釈するとブランコを蹴飛ばしたことになります。旧かな遣いご注意を。「ふらここを思ひ切り漕ぎ転校す」。
さらばえてあいつも花をみてゐるか 弘道
「あいつも」に作者と「あいつ」の関係を凝縮しました。「花」の一字が印象的。
人の世のはかなき夢を桜漬 隆子
一房の桜漬が白湯にほどける一瞬に見る夢。
【入選】
天を突く欅新芽の晴れ晴れと 和子
まさに晴れ晴れとした一句。どの言葉もいきいきと働いています。
あふれ出すカリヨンの音や花水木 勇美
「あふれ出す」に春の喜びを表現しました。
茎わさび刻みてけふの浄らかに 勇美
厨ごとは生きていく基本です。日々の真摯な願いを山葵に託して。
花ふぶき花のいのちを辻々に 涼子
命を感じさせるのはまさに花ふぶく時かもしれません。「辻々に」が的確、かつ思いが伝わります。
蝶のまふ碗にひとひら桜漬 隆子
少しきれい過ぎますが、春の夢のような世界を描きました。
花筏幼く母と別れし日 弘道
取り合わせの一句、季語の「花筏」がいい。「花筏母と別れし幼き日」。
*投句より
「頭垂れ切腹最中さし出しぬ」
江戸の味に掲載の「切腹最中」にかかんに挑戦されましたが、残念ながら季語がありません。「花ふぶき切腹最中さし出しぬ」では付きすぎでしょうか。ぜひ、いい季語を探して再度挑戦してください。
「天高く子等守れかし鯉幟」
初夏らしく勢いがあり「天高く」という入り方もよいのですが、子供を守るというのでは鯉幟の説明の域を出ていません。もう一歩大きい捉え方をしてみましょう。
「南朝の春はとこしへさくら漬」
「とこしへ」と「さくら漬」に理屈でのつながりを感じさせてしまうのが残念。