カフェネット投句(6月)飛岡光枝選
那智の滝など、水量も高さも豊かな滝に近づくとその風圧と爆音に圧倒されます。句はその迫力を力強く表現しました。原句は「地の底を割り砕かんと滝千尋」。この句の場合は「千尋」が、地を砕くほどの高さがあるのだという説明になってしまいます。より実感のあるシンプルな言葉を。
梅雨入りや朝の玉薬五粒ほど 守彦
原句は「梅雨入りの朝の玉薬五粒かな」。丁寧な暮らしの様子が垣間見える一句ですが、一物仕立ての原句では報告の域。切ることにより取り合わせの句として、季語がより活きてきます。「玉薬」は「がんやく」と読みましたが、表記は普通「丸薬」。「玉」とされたのは作者の思いでしょうか。
【入選】
一刷の朝焼の空金宝樹 涼子
金宝樹の鮮やかな紅と夏の朝焼けの赤。原句は「一刷毛で朝焼けの空金宝樹」。ブラシの木からの連想が出発でもいいのですが、それからより先へ推敲を。
青梅雨に日ごと伸びゆくタワアかな 勇美
大都会の梅雨の様子を描きました。この句も頭からお尻まで繋がる形ではただの報告に。「青梅雨や日ごと伸びゆくビルの群」など。
ワンピース裾ふくらませ薄暑かな 守彦
薄暑は何にでも付きそうで、とてもやっかいな季語ですが、この句の上五中七の描写との取り合わせは上々です。
湧き上がる鳥の合唱風青し 和子
「風青し」が季語としていまひとつ弱く、この句の場合は世界が出来上がらない。「湧き上がる鳥の合唱青嵐」など。