カフェきごさい「ネット句会」(10月)《互選》+《飛岡光枝選》
(連中)都・良子・すみえ・光尾・勇美・桂・和子・雅子・裕子・涼子・弘道・隆子・光枝
(良子選)
分け入れば釣船草のほの明かり 和子
挽き臼に翠ほのかや走り蕎麦 裕子
山々をあまねく鎮め望の夜 涼子
(すみえ選)
挽き臼に翠ほのかや走り蕎麦 裕子
蕎麦の花白馬連峰浮かべたり 和子
スカイツリー大きな月を上げにけり 光枝
(涼子選)
藍染めの東京の空月上る 光枝
新しき日の差しきたり野分あと 良子
スカイツリー大きな月を上げにけり 光枝
(光尾選)
挽き臼に翠ほのかや走り蕎麦 裕子
山々をあまねく鎮め望の夜 涼子
スカイツリー大きな月を上げにけり 光枝
(和子選)
藍染めの東京の空月上る 光枝
赤さびの鉄路に揺れる曼珠沙華 光尾
しんしんと身の冷ゆるまで今日の月 光枝
(裕子選)
弁当箱さげて十五夜帰りけり すみえ
選挙カー稲穂垂れゐるところまで 良子
しんしんと身の冷ゆるまで今日の月 光枝
(都選)
田仕舞やけさ青刈りの注連を張り 隆子
子の語る夢まぶしけれ梨の水 隆子
暁の間遠くなりたる鉦叩 裕子
(弘道選)
田仕舞やけさ青刈りの注連を張り 隆子
赤さびの鉄路に揺れる曼珠沙華 光尾
きぬかつぎ小津の映画の余韻かな 勇美
(雅子選)
挽き臼に翠ほのかや走り蕎麦 裕子
見失ふ打球のゆくへ秋澄めり 勇美
蕎麦の花白馬連峰浮かべたり 和子
(桂選)
満月やひときは高き峯の松 裕子
挽き臼に翠ほのかや走り蕎麦 裕子
ベランダに出れば隣も良夜かな すみえ
(隆子選)
新しき日の差しきたり野分あと 良子
見失ふ打球のゆくへ秋澄めり 勇実
ベランダに出れば隣も良夜かな すみえ
(勇美選)
月揚げて殿もござるや天守閣 涼子
蕎麦の花白馬連峰浮かべたり 和子
お月見や朝から茹でる里のもの 雅子
(飛岡光枝選)
【特選】
新しき日の差しきたり野分あと 良子
台風一過の秋晴れです。その日差しを「新しき日」と捉えてまさに新鮮な一句となりました。「新しき」を「あたらしき」とする形もご検討ください。
赤さびの鉄路に揺れて曼殊沙華 光尾
描写が的確で言葉の緊密さが際立つ一句です。原句は「赤さびの鉄路に揺れる曼殊沙華」。
【入選】
満月やひときは高き峯の松 裕子
月の光でより際立つ松の存在感。
分け入れば釣船草のほの明かり 和子
草の間で揺れる釣船草の可憐さ。「分け入る」が草葎に体ごと入る感じがして小さな植物を見つけるには少し違和感があります。
挽き臼に翠ほのかや走り蕎麦 裕子
挽き臼と具体的に描写してよく見える句になりました。ただ新蕎麦が緑を帯びているという句はたくさんあるのでより新鮮な句を目指しましょう。
田仕舞やけさ青刈りの注連を張り 隆子
収穫の無事を祝う田仕舞。藁が香り立つ注連縄に喜びが溢れます。
自然薯を掘つて子どもと背比べ 弘道
今年一番の自然薯でしょうか、思わず子供の背と比べてしまう嬉しさ。原句は「自然薯を掘つて子と背比べけり」。
子の語る夢まぶしけれ梨の水 隆子
秋の果物の感じはあるのですが、「梨の水」より合う季語がありそうです。
山々をあまねく鎮め望の月 涼子
月の光にしんかんと聳える山々。原句は「望の夜」ですが、夜では茫洋としてしまいます。
曼殊沙華歓声の無きグラウンド 光尾
同じ作者の鉄路の句と同様、深閑と開く曼殊沙華を捉えました。観客の代わりに揺れる曼殊沙華が恐ろしくもある迫力のある句です。原句は「歓声の無きグランドに曼殊沙華」。説明の「に」は省けることが多い。
ベランダに出れば隣も良夜かな すみえ
「隣も月見かな」では句になりませんが「良夜」と捉えた上々の一句。「ひとそれぞれ書を読んでゐる良夜かな 山口青邨」の心持ち。
この家も独り住まいか柿熟るる 弘道
たわわに実った鮮やかな柿がかえって切ない。
きぬかつぎ小津の映画のなつかしく 勇美
原句は「きぬかつぎ小津の映画の余韻かな」。小津映画の余韻のなかで熱燗など楽しんでいるのかもしれませんが、この句の場合「余韻かな」ではわかりすぎて俳句の手前の描写で留まってしまいます。より広々と。
お月見や朝から茹でる里のもの 雅子
「朝から」にお月見の心映えが感じられる一句。「里のもの」がお月見の供え物らしい。
今日の月わが推敲の埒もなや 都
原句は「あすは名月」。せっかくの名月なのにということかもしれませんが、間延びしてしまうことは否めません。月に嘆いているストレートな句にするとより思いが伝わります。