今月の料理(3月)_蕗の薹のパスタ
北国に暮らす者にとって春は特別です。雪の毎日を送る身にとって、春の暖かさは何よりあり難いのですが、それにもまして嬉しいのは光です。雪に映える日差しはもとより、なにもかも眩しいと感じるのは毎日を暗い雪の中で過したせいばかりではないようです。
2月も半ば頃から段々に日が長くなりますが、どんよりとした空の下でも、心なしか明るさの残る暮空に春の兆しを感じます。雪解の輝きも、芽吹のあざやかさも春は光となってやって来るのです。
今頃の季節になると都市のマーケットでは、蕗の薹やたらの芽などが、パック詰めされて売られますが、とても山菜とは思えません。新潟ではまだ雪が一面に残っていますが、日当たりの良い所は黒々とした土が見え始める頃。長靴でその土を蹴飛ばし真っ白な雪をどろどろに汚しながら、蕗の薹を探し出します。あの輝くような緑のつぼみを見つけたとき、やっと春にであった喜びを感じます。それはまさに春の光そのもの。
蕗は根で繋がっているので、一つあるとその辺りにまたあるもの。雪の上に五つ六つと転がして、長靴で雪を蹴飛ばしては探します。こうして雪の中で寝ている子を無理やり起こすようにして積んだ蕗の薹は、アクが少なくとても柔らか。
さてこの蕗の薹パスタにすると、また趣が違って美味しい。ざくざくと刻んだ蕗の薹をオリーブオイルでサッと炒め、胡椒をふり塩ではなくアンチョビで味を調えます。蕗の癖とアンチョビの癖がぶつかり合い深い味わいをかもし出してくれます。パスタの白と、蕗の薹の緑とところどころ見えるアンチョビの色が、先ほどの蕗の薹を探しに行った野の景色の色となってお皿の上に現れます。
【作り方】
1)フライパンにオリーブオイルいれ、ざく切りにした蕗の薹を炒める。(蕗の苦味やアクが気になる時はさっと下茹でしてアクをぬくと食べやすい)
2)蕗の薹に胡椒をしてアンチョビを加えよく混ぜる。
3)フライパンの火をとめ、茹であがったバスタを絡ませて出来上がり。
アンチョビはペーストでもよろしいのですが、メーカーにより塩分の濃度が異なるので、塩加減を見ながら調整して下さい。
【材料】 一人前
パスタ 100グラム
オリーブオイル 適量
蕗の薹 3.4個
アンチョビ フィレ2から3尾
こしょう 適量