カフェきごさい「ネット句会(10月)」互選+飛岡光枝選
連中:桂、光尾、都、雅子、すみえ、弘道、裕子、涼子、眞理子、ひろ女、隆子、樹林、利通、光枝
≪互選≫
裕子選
火の山の灰もて干さん秋の鯖 隆子
秋の蚊遣り池のほとりの句会かな 桂
草引かずあれば野菊の黄色かな 隆子
すみえ選
ラ・フランスまだ眠りゐる籠の中 光枝
火の山の灰もて干さん秋の鯖 隆子
栗剥くや私のための栗ご飯 雅子
雅子選
新蕎麦や一山越えて水汲みに 桂
蘇鉄の実ブラキオサウルス首伸ばす 涼子
啄木鳥の音冴えわたる避暑地かな 弘道
涼子選
産土の満州遠し天の川 樹林
秋の蚊遣り池のほとりの句会かな 桂
村中に新藁の香の溢れけり 裕子
都選
ラ・フランスまだ眠りゐる籠の中 光枝
火の山の灰もて干さん秋の鯖 隆子
栗剥くや私のための栗ご飯 雅子
ひろ女選
村中に新藁の香の溢れけり 裕子
落鮎に水また青し長良川 利通
蜻蛉の静止してゐる空の中 裕子
樹林選
往還を猫ゆつたりと月今宵 桂
月追へば高速道路ふうはりと 涼子
鳥帰る帰れぬ鳥を後にして 弘道
桂選
浅間嶺を転がりてくる秋日かな ひろ女
蘇鉄の実ブラキオサウルス首伸ばす 涼子
崑崙の風とたはむれ馬肥ゆる 都
弘道選
産土の満洲遠し天の川 樹林
村中に新藁の香の溢れけり 裕子
裏山の古老の山栗いただかん 裕子
光尾選
後ろ姿が母の背となる良夜かな 樹林
産土の満州遠し天の川 樹林
鳥帰る帰れぬ鳥を後にして 弘道
隆子選
ラ・フランスまだ眠りゐる籠の中 光枝
栗剥くや私のための栗ご飯 雅子
産土の満州遠し天の川 樹林
眞理子選
あかあかと朝日の色の熟柿吸ふ 光枝
ラ・フランスまだ眠りゐる籠の中 光枝
往還を猫ゆつたりと月今宵 桂
利通選
火の山の灰もて干さん秋の鯖 隆子
蘇鉄の実ブラキオサウルス首伸ばす 涼子
往還を猫ゆつたりと月今宵 桂
空の果てまで続く天の川を眺めていると、世界中で様々な人が同じように星空を眺めているということを実感します。「遠し」は距離の遠さ以上に、心のなかの思いの遠さでしょう。
蘇鉄の実ブラキオサウルス首伸ばす 涼子
太古を思わせる蘇鉄の葉や実。その存在感は恐竜の時代に繁茂した巨大シダ類を思わせます。句はその二つの取り合わせですが、「首伸ばす」の動きで句がいきいきとしました。
啄木鳥の音冴えわたる軽井沢 弘道
原句は「啄木鳥の音冴えわたる避暑地かな」。「啄木鳥」は秋、「避暑地」は夏の季語。作者は啄木鳥の句として、秋の避暑地を描こうとしたのだと思いますが、原句のままでは「避暑地」が夏の姿のまま。提示した形に限りませんが工夫が必要です。秋の澄んだ空気のなか、啄木鳥の音が響きます。
【入選】
火の山の灰もて干さん秋の鯖 隆子
干鯖を言うのに中七の表現が少々重たいですが、脂の乗った秋鯖がいよいよ美味しそうです。
栗剥くや私のための栗ご飯 雅子
栗を剥くのは一苦労。栗ご飯を心に励みます。「私のため」が実感であるだけにより愉快。
月見団子うさぎの跳ねる包紙 都
この包紙でしたら、開く前から美味しいとわかります。原句は「月見団子包みし紙に兎跳ね」。散文から俳句への推敲を。
月光のベールをまとふ天使かな 眞理子
教会というより、ヨーロッパなどの橋にある彫刻の天使を思いました。月の光の中を舞い降りてきたようです。
秋の蚊遣り池のほとりの句会かな 桂
上五の字余りで蚊遣りの存在感が増しました。「秋」ならではのしぶとい蚊。
村中に新藁の香の溢れけり 裕子
秋の情景をしっかりと描きました。「村中」「溢れ」に秋の収穫の喜びが十二分に表現されています。
灯ともせば南瓜ランタン叫びだす 涼子
映画「スリーピーホロウ」の一場面のよう。ハロウィンは秋の行事としてますます盛んになってきました。俳句も作られていますが、今後季語として残るかどうかは名句の誕生にかかります。原句は「灯ともせば南瓜のランタン叫びだす」。
裏山の古老の山栗いただかん 裕子
山栗は小さいのでたくさん食べるのには手間がかかりますが、とても甘く、ありがたい山の恵みです。句の山栗は老木、さぞや滋養ある実がなることでしょう。