カフェきごさい「ネット投句 6月」 飛岡光枝選
山道で思いがけなく出会った、咲き残る花への驚きと懐かしさ。「一輪」「白さ」が秀逸。原句は「一輪の余花の白さよ山深し」。
【入選】
飛魚の羽の光るや防波堤 裕子
防波堤から飛魚の飛ぶ遥かな海を臨んでいるのでしょうか。夏の波のきらめきと、飛魚の羽のきらめきと。原句は「飛び魚や羽光るるは防波堤」。
紫陽花の川と流るる電車道 和子
走る電車の中から沿道の紫陽花を眺めているのでしょう。とりどりの色が混ざり合い流れていくという、動きのある紫陽花の句は新鮮。ごちゃごちゃしそうな内容が、思い切った言葉の運びですっきりした一句になりました。
砲声の響く湖霧深し 和子
砲声も湖も霧のなかに溶け込んでいく、現代の不安感をも感じさせる一句。原句は「砲声の響く湖夏の霧」。実景は原句通りなのだと思いますが、作品に仕上げる段階で「夏」が季語として効いているかどうかを考えたいところです。