カフェきごさい「ネット句会」10月 ≪互選+飛岡光枝選≫
【連中】桂 すみえ 良子 都 隆子 酔眼 光尾 雅子 利通 裕子 光枝
≪互選≫
光尾選
ふるさとへ戻りしここち温め酒 隆子
摘みたてのみょうが華やか道の駅 雅子
遠ざかるバグパイプの音秋澄めり すみえ
都選
桃太郎なんども生るる夜長かな 裕子
初風にバグパイプの音聞こえしか 光尾
日ぐらしや三つ四つをやり残し 光尾
裕子選
八千草の土手に分け入る峡日和 利通
夢二の猫飛び出しさうな秋扇 都
小鳥来てにはかに母のゐますかに 隆子
すみえ選
くノ一の伊賀の案山子も黒づくめ 隆子
両の手に糠しつとりと今年米 雅子
花芒二三本活け良夜かな 雅子
良子選
老いてなほお洒落上手やラ・フランス 桂
夢二の猫飛び出しさうな秋扇 都
ふるさとへ戻りしここち温め酒 隆子
桂選
話したきことのありさう林檎むく 良子
ふるさとへ戻りしここち温め酒 隆子
遠ざかるバグパイプの音秋澄めり すみえ
雅子選
八千草の土手に分け入る峡日和 利通
桃太郎なんども生るる夜長かな 裕子
コスモスを束ねてみても淡きかな 良子
酔眼選
両の手に糠しっとりと今年米 雅子
話したきことのありさう林檎むく 良子
新走り浮かぶ顔みなあちら側 光枝
隆子選
話したきことのありさう林檎むく 良子
引き戸開け古書噎せ返る残暑かな 酔眼
盆帰省義手にカフスを止めなほす 利通
利通選
桃太郎なんども生るる夜長かな 裕子
小鳥来てにはかに母のゐますかに 隆子
故郷の地酒を提げて衣被 裕子
≪飛岡光枝選≫
【特選】
新蕎麦を待つ小上がりのスポーツ紙 酔眼
小うるさい(失礼!)蕎麦屋の方が美味しい(感じがする)という思い込みからか、新蕎麦と言うと少々かしこまった句が多いなか、この句のざっくばらんな様子が好もしい。スポーツ紙を読みながら待つ新蕎麦。たぶん記事の内容は覚えていないのではないでしょうか。
初風にバグパイプの音聞こえしか 光尾
9月8日、96才で亡くなったエリザベス女王。波乱に満ちたその生涯と君主としての存在感ゆえ、世界中で多くの方が国葬中継を見守りました。その一コマを切り取り、愛し親しんだバグパイプに送られる女王を悼む静かな一句となりました。将来句集に掲載の際は「エリザベス女王逝去」などの前書きを。季語の「初風」がいい。
小鳥来るにはかに母のゐますかに 隆子
秋の明るい日射しのなか、とりどりの小鳥がやってきます。小鳥の声に包まれていると、ふと身近に母上の気配が、という句です。母上が小鳥となってやってきたという句ではありません。原句は「小鳥来てにはかに母のゐますかに」。
【入選】
老いてなほお洒落上手やラ・フランス 桂
弾むようなリズムが句の内容とよく合っています。
桃太郎なんど生まれる夜長かな 裕子
この子は今、桃太郎がお気に入り。桃太郎が桃から生まれるハイライトを、今夜は何回読まされるのやら。桃太郎が日本中で生まれているのだろうと思えるのも、「夜長」の季語の力でしょう。原句は「桃太郎なんども生るる夜長かな」。
いちじく捥ぐ大きな葉かげ母の声 すみえ
木漏れ日のなか、母上の明るい声が聞こえます。秋の日射しを感じる一句。原句は「いちじく捥ぐ大き葉かげに母の声」。
ふるさとへ戻りしここち温め酒 隆子
寒さを感じ始める秋の終わりは、大の大人でも心細くなる季節。季感をよく捉えた一句です。季語の「温め酒」は「あたためざけ」と読み「ぬくめ酒」は傍題。
くノ一の伊賀は案山子も黒づくめ 隆子
忍者の伊賀では当たり前ですが、くノ一と言って愉快な一句になりました。でも、黒づくめの案山子では、鴉が仲間だと安心して寄ってくるような気がしますが・・・。
竹伐らんやをら取り出す肥後守 都
孟宗竹を伐るには肥後守では心細いですが、黒竹などの細い竹なら伐れるのでしょうか。「やをら取り出す」の勢いで、肥後守がりっぱな日本刀のような風情。
盆帰省義手にカフスを止めなほす 利通
にぎやかでも少人数でも、親族が集まるお盆の帰省は多くの方にとって大切で楽しみなこと。思いの籠った一句です。
日や月や風や喜び柿たわわ 桂
原句は「日の月の風の喜び柿紅葉」。柿紅葉も美しいですが、上五中七の宇宙の躍動感を受けるには、今まさに命輝く柿の実を置きたいと思います。ご一考を。
次回の「カフェきごさい句会」は12月です。日本中が色づく美しい季節、みなさまどうぞ句作をお楽しみください。くれぐれも体調にはお気を付けて。(光枝)