a la carte 玉解く芭蕉
芭蕉生誕の地である伊賀上野で句会がありました。句会の前に、芭蕉生家を訪ねました。芭蕉が生まれて三百七十年。当時の屋敷からは改変を余儀なくされていますが、芭蕉在りし頃の佇まいが今も残っています。土間にある井戸(水は止めてあります)は、当時のままだそうです。おくどさんの近くに井戸があるので、台所仕事もはかどったことでしょう。
生家の裏には、芭蕉が処女著作『貝おほひ』(内題「三十番俳諧合」)を執筆した釣月軒があります。宗房という号で、序文によると寛文十二年一月二十五日に上野天満宮に奉納しています。二十九歳のときでした。
庭には、枇杷、南天、柿、栗などと共に芭蕉が植えられています。芭蕉は大形多年草です。初めて見た時は、その大きさに驚きました。巻いていた葉が解けると大きいものでは二メートルにもなります。今は、玉解く芭蕉、青芭蕉の季節。瑞々しい緑の葉が風を招いているようです。(洋子)
よき風に玉解く芭蕉となりにけり 洋子