花を付けた花木がすべて無いわけではなく、代わりに令法や梅花空木、山法師や銀香梅など、目に涼しい白色の美しい花を咲かせる枝が目に付くようになります。
「この金糸梅はヒペリカムとどう違いますか?日本でのお稽古で使って気に入ったのでロンドンで庭に欲しいと思ったので名前を聞いたらヒペリカム,(ヒぺリクム)と言われました。とても似ているのだけれど」ロンドンから一時帰国している生徒さんの質問でした。
ヒペリカムと呼ばれる植物は200種類もあり、オトギリソウ科でヒペリカムは属の総称です。北米やヨーロッパの原産で、この生徒さんが植えようとしているのは、目が覚めるような鮮やかな黄色い花が特徴のヒペリカムです。
実が付いたときには種類によりグリーンのほかに白やピンク、赤、紫赤など、濃い緑の葉とともに楽しめます。丈は高くはなく葉は茎に対生、生命力が旺盛で地下茎が発達して、増えすぎることもあり庭に植えるのも考えて植えた方が良いそうです。
似たようなものは日本にもあり、山野に自生する多年草のおとぎり草はやはり黄色い花をつけるものがあるということで、秋の季語になっています。
お稽古でいけた金糸梅ですが、花が梅の形に似ているのでこの名がつきました。花の中心には短い黄色の雄蕊を四方に伸ばしています。金糸梅は初夏に花をつけ、中国が原産です。
金糸梅に似ているものに未央柳があります。柳、という名前は葉が柳に似て、やや細く 葉裏は少し白いのです。共に五弁の花びらを持つ金糸梅と未央柳はいずれも枝ぶりがよく、流れるような曲線を見ることもあり、花がなくなってもこの線だけでいけばなの美しさを十分表現することが可能です。
未央柳は中国原産の園芸種で美女柳とも呼ばれます。枝先につく花の中央に多数の雄蕊があり、あの国独特の服を着た柳腰の美女を思い描きます。
細い枝をいいけるときはくるくると回り、緑の葉の裏は粉を吹いたような緑色なのでどの表情が一番かと見定めるまでが大変です。
さて、この季節に皆さんが出会う黄色の花をつけた植物は何でしょうか?金糸梅(Hypericum patulum) 、また未央柳(Hypericum chinense)、または(Hypericum calycinum)などのヒペリカム。いずれも頭にヒペリカムとつきますので近縁の植物です。
写真はヒペリカムと未央柳、このふたつは10メートル離れたところに咲いていました。生命力の強いヨーロッパ原産のヒペリカムにおされて中国原産の未央柳が消滅しないように、来年もひそかに気にかけてその道を通ってみようと思いました。(光加)