a la carte_ひおうぎ(アヤメ科)

この植物にいつ、誰が(ひおうぎ)と名をつけたのでしょうか。実際の檜扇は文字通りひのきでつくられた扇で、宮中を中心に長い歴史があります。その檜扇を開いたような形に、確かにこの(ひおうぎ)は似てはいますが、そこは植物。
根元から上に向って次々と出ている厚めの平たい葉が隣の葉とすこしずつ重なり、一枚一枚に微妙なねじれがあります。
夏には粉が吹いたような葉の間から茎が出て、枝分かれをしたその先にオレンジ色の花をつけます。斑が中心にはいった花は次々と咲き、花のあとには薄緑色のふっくらとした実をつけるのです。
私たちがよくいけるのは、園芸品種のもので中でも「だるまひおうぎ」と呼ばれるもので、花が終わるとやがて綺麗なグリーンをした実を楽しむことが出来ます。その実のどこかユーモラスな形は小さなだるまに似ているようにもみえてきます。
この薄緑色はやがてあめ色に変化し、乾いてはじけると中心に黒い実がしっかりとついて現れるのです。これが枕詞の(ぬばたま)をあらわす鳥羽玉(うばたま)または射干玉(ぬばたま)と呼ばれるものだと知ったときは、これだったか!としげしげと手に取って見ました。
この名がついた和菓子をお土産に何度かいただいたことがあります。全体が黒っぽかったり、餡に黒砂糖が使われていたりして、さすがぬばたま。この言葉は黒や闇などの枕詞とは知っていたので、それが和菓子の名前の由来だろうとは思っていましたが、実際にぬばたまの実を目にすれば実感が湧いてきます。
植物界には黒っぽいものはたくさんあります。すぐに思いつくのはグリーンのところに黒が入ったしゃれたカンガルーポーですが、実際は黒といっても紫や赤を含んだ黒百合のようなものがほとんどです。一方実は、はじめは緑でも、熟れると黒に近いものが多くあります。
洋種ヤマゴボウなども、秋が近づくと実は黒になり熟して落ち、踏んだり、また衣服に着くととれなくて困った方は多いでしょう。ねずみもちの実はチャコールグレーをもっと黒に近くしたもの。スイカズラの実も黒く熟します。あげるときりがない黒い実ですが、その中でもなぜひおうぎの実が選ばれ、枕詞になったのでしょう。
丸い実の表面は漆黒ですがつややかでもあり、その黒色の深さが理由ということなのでしょうか。それとも当時これほどの黒をした植物が回りになかったのでしょうか。
又一つ気になる問を投げかけているひおうぎなのです。(光加)
