今月の花(3月)_ミモザ

1935年に公開されたフランス映画「ミモザ館」〔Pension Mimosas〕の舞台は南フランス、コートダジュールで、ミモザという名前の下宿屋を巡る人々の話です。
映画祭で知られるカンヌや、ニースを含むコートダジュールと呼ばれる一帯は、世界各地から人々が集まってくるおしゃれな保養地として知られています。フランス語で紺碧海岸を意味するこの地域で、早春にミモザ祭りが行われます。ミモザの花を飾った山車が出て、ミス・ミモザのコンテストが開かれるミモザ街道と呼ばれる道に、この花をたずねて観光客が繰り出します。
フランスに住んでいた知人は、「あちらのミモザの花は一つ一つの花が日本のものと比べるともっと大きくて、房も立派で遠くから見るとまるで毛糸玉のようだったわ」といいます。
ミモザはオーストラリアの原産で、現地ではWattleと呼ばれ、日本には明治時代に入ってきました。現在、日本のミモザは何種類かありますが、よく見かけるのは葉の緑がすこし銀がかっている銀葉アカシア、ヨーロッパではその花が香水に用いられる房アカシア、そしてミモサアカシアなどです。ミモザは、花の咲いたときはもちろん、咲いていないときでも葉のついた枝をいけることがあります。
日常生活のなかでもミモザはそのイメージが好まれる花です。ゆで卵を裏ごしした白身と黄身を使って飾り付けをするサラダはミモザサラダとよばれ、シャンパンとオレンジジュースを混ぜた通称ミモザというカクテル(シャンパン、ア、ロランジェ)は、その色がまさにこの花を思い起こさせます。
しかし花のついているミモザを元の枝から切ってしまうと、この花の温かい色調は数日で輝きを失ってしまいます。この花の見ごろは一日から数日と短いのです。
まさに今が盛りというとき、いけばなではミモザの葉を全部取ってしまう事があります。花の黄金色の部分は芯までしっかりとこの色ですが、葉を取って花だけ残すとその重さを感じさせる事なく 浮いているような明るい軽やかさがあふれます。
でも、何本もの枝の大量の葉を一枚一枚とっていくのはかなり時間がかかります。先日も何人かに手伝ってもらってこの葉を取りながら、コートダジュールの紺碧の海と空にどんなにこの花が映りがいいか、ゆったりとすごしているヨーロッパの上流階級の人たちや、世界の大富豪たちもうっとりとこの花を眺めているのだろう・・・と想像していると 突然鼻がむずむずしてきました。この頃はそろそろ花粉症の季節でもあります。ヨーロッパのミモザの探訪はまだずっと先のことになりそうです。(光加)
