『大人も読みたい こども歳時記』のすすめ
先日、小学館から刊行された『大人も読みたい こども歳時記』(長谷川櫂監修、季語と歳時記の会編著、1600円+税)を早速使っています。使いやすく、タイトル通り子どもも大人も読みたくなる内容です。
春・夏・秋・冬・新年の季語群のインデックスが5色に分けてあるので、とても引きやすいです。1ページに季語が2つずつ。本格的でわかりやすい季語解説。例句は子どもと大人の名句が3句。漢字にはルビがふってあります。そして全ての季語に、いきいきとしたカラー写真がついています。子どもの笑顔が印象的で見ているだけで幸せな気分になります。子どもたちが季語に親しみ、俳句をいっぱい作ってくれるといいなと思います。
「俳句の作り方のポイント」や「にゃーたが教える句会のやり方」は、俳句作りや句会の実践に役立ちます。にゃーたというのはイラストに登場する俳句の好きなかわいい猫の名前です。初めて俳句を作る子どもたちはもちろん、指導される先生方の心強い味方になることでしょう。
また、家庭でもこの歳時記をガイドブックに俳句を作ってみてはいかがですか。例えば、1つの季語を選んで家族が1句ずつ詠むと個性の違いが出て楽しいのではないでしょうか。
大人にとっては、例句に載っている子どもたちの俳句がよい刺激を与えてくれると思います。「はっきりとわかりやすく」「言われてみるとハッとする新鮮な俳句」を詠みたいと思っているのですが、「説明」「理屈」「意味不明」などに陥ることがあります。そんな時、子どもたちの俳句に触れると喚起されるものがあります。例句の中から子どもたちの俳句をいくつか紹介します。
ひな祭り結婚するなと父が言う 萌(小5)
カランコロン氷の音して夏が来た 栞(小4)
えだまめとぐりんぴいすはいとこかな 歩夢(小1)
着膨れやチャック開けるとまたチャック 愛子(小5)
福寿草飾りのごとく生えてをり 裕隆(小4)
いいな、おもしろいなと感じたことを素直に詠んでいます。言われてみるとハッとする俳句です。作者の思いが読者にきちんと伝わり、新鮮な感動が生まれます。監修の長谷川櫂さんが、この歳時記の冒頭「子どもの俳句、大人の俳句」の中で述べているように大人は子どもの俳句にこそ大いに学ぶところがあると思います。(木下洋子)