今月の花(4月)チューリップ
「あら、変わったチューリップ!」教室で生徒さんの声があがります。
緑のなかに赤が混じった花びら、その縁にややフリルのあるまだ蕾のチューリップ。
「咲いた、咲いた、チューリップの花が」に始まる童謡「チューリップ」が生まれた時の花の色は 赤、白、黄色、くらいだったのでしょう。いまではたくさんの色や形が楽しめ、香りのするチューリップもあります。ふつうは一つの球根から一輪の花が出ていますが、たくさんの花がつくものもみかけるようになりました。
和名は鬱金香(うっこんこう、または、うこんこう)といい、江戸時代末に日本に伝えられたといわれます。当時のチューリップの香りは字のとおり、鬱黄(ターメリック)の香りに似ていたからだということです。
原産地は中央アジア、また北アフリカのあたりで、やがてトルコで多くの種類が生まれました。トルコのターバンを意味するTulipamから学名Tulipaとなった歴史はあの花びらのふくらみ具合をみてトルコの人たちがどこか同じ形を想像したからでしょうか。
チューリップはさまざまな花の色や形が際限なく作りだされるようになると、人々を夢中にし、一時はヨーロッパでは投機の対象にさえなりました。
咲いたチューリップは、やがて茎は伸びきり花も大きく膨らんできます。花びらたちに守られた中の空気があふれんばかりになり、花びらもすこし透けてきたなと思ったころ、大きな花びらをつまんでひとつひとつそりかえしてあげます。すると底にある雄蕊とめしべが現れ、最後にいっそう華やかな花の表情が楽しめます。
「もうひと花咲かせる」という言葉がありますが、もしかしてもともとはこういうことだったのではないかと開かれたチューリップの姿に見入ってしまうこともあるのです。
思いがけない表情は、人が関わることにより、咲ききってなお「有終の美」を飾るのかもしれません。(光加)