今月の花(7月)紅花
コロンとした緑の頭の先に濃い黄色の3-4センチの花を開かせる紅花。原産地はアラビアあたりから北アフリカといわれています。細い花びらはやがて黄色から赤い色へと変わっていきます。同じキク科のアザミのように花の周りに小さな葉があり、その下の薄緑の茎についている葉は、触ってみると少しざらりとした感覚が手に残ります。よく見れば縁にある小さな棘が原因でした。枝別れした茎のそれぞれの先に、花を一輪ずつ付けます。
紅花はかつて末摘花と呼ばれ、源氏物語の末摘花の巻が思いだされます。主人公の女性は鼻の先が赤いため、高貴な家の出であるにも拘わらず内気で、その容貌は源氏も気の毒に思うほどでした。「末摘花」とは源氏がつけたニックネームです。性格のいい姫のことを自分は決して嫌いでないことを伝えようと、姫を紅花の愛らしさにたとえた源氏のやさしさとユーモアを、紫式部はこの巻に込めたかったのかもしれません。
源氏物語が書かれるずっと以前の紅花が、古墳から顔料として発見されています。中国経由で渡ってきたところから呉(くれ)の国からの藍、「呉の藍」から「紅(くれない)」となっていったと辞書にはあります。では何故「藍」なのか。色の藍は今では青をさしますが「藍」を色という総称で使っていたのではという説もあります。この花は染料の他、薬、口紅や頬紅などの化粧品、実からサフラワーと呼ばれる食用油、と広く使われています。
10年ほど前、紅花の染料を使った着物をある方から手渡されました。様々な表情の色で染め上げられた糸による薄紅の紬で、とても自分では手の届かないものでした。広げると背中を中心に大きな桃の花が一輪織りこんでありました。「私には派手になったわ。あなたに似合うと思う。でも光加さんも派手になったら言ってちょうだい。その次の人に渡すから」。晴れの日には着させていただいていたこの着物は今年、顔写りもすこし変わってきたのでお返ししました。こうして次の方がまた、紅花の命を受け継いでいってくださることでしょう。
そのまま乾かせばドライフラワーにもなり、また別の個性を発揮する紅花。紅花は巧みにその用途とかたちを変えて、人間の生活の中でずっと生き続けていくのではないでしょうか。(光加)
