エケべリア
多肉植物というものに興味がなかったのは、この植物たちには茎のないものもあり、いけばなの花材としてあまり考えられなかったからだと思います。
その一種、エケベリアは数えきれないほどの種類があります。中央から360度に出ている何枚も重なった葉の様子はまるで開いたバラの花のよう。葉は厚く、ひやりとして固い耳たぶのような触感です。調べると弁慶草科に属していました。
初夏に薄いピンクの小さな花が集まる弁慶草も多肉性で弁慶草科です。葉や茎は粉の吹いたような薄めの緑色、乾燥にとても強く、まるで豪傑の武蔵坊弁慶のようということで名づけられているそうです。
昨年2月末の花仙の会に使ったエケベリアはずっと我が家の棚の上にありました。水にも入れず、土にも植えなかったのです。ところが茎の元にある葉が少し萎びてきたにもかかわらず、新しい葉も出て小さな花も咲きました。盛夏を迎えたころ、私は旅に出て帰り、エケベリアたちもさぞ暑かっただろうとさっと水をくぐらせ、水気を注意深く拭いてあげました。ところがエケベリアの葉は急にクタッとしてしまいました。何ということをしてしまったのだろうという反省も後の祭り。どうすることもできず半年も同じ空間にいた仲間が次々といなくなり、その空間に穴があいたようで悲しい思いをしました。
11月のデモンストレーションに「開店祝いの花」というテーマでいけることになり、私はエケベリアを選びました。新開店の店には賑やかに花々を使ったアレンジが多数贈られると推察し、あえて花は2本の赤のアマリリスしか使わず、あとは赤いウインターベリーやきんかん、風船唐綿などの実のなった花材を選びました。そして、他の植物が枯れてもエケベリアは元気で、送り主の印象も残るのではと思ったのです。
今度はしっかりと植木鉢にサボテン用の土を入れてエケべリア9個を植え、朝は外に出して陽にあてたりしています。
弁慶の泣き所は向う脛。牛若丸が投げた扇がそこに当たって降参したといわれています。乾燥にはめっぽう強いというエケベリア。その泣き所のひとつは植物に一番必要と思われている水だったことがこの多肉植物への興味を掻き立てられ、ここのところ毎日ご機嫌を見ているのです。(光加)