今月の花(3月)苺の花
苺は夏の季語ですが、現代では栽培種であるオランダ苺がハウスで育てられクリスマスからお正月、卒業や入学の時期に出回ります。
露地栽培の苺は、バラ科のオランダ苺属の特徴のひとつである白い小さな5弁の花びらをもった花を春の暖かさに可憐に咲かせます。
やがて赤い実がつきますが、私たちが実として見ている部分は花托で、表面にあるつぶつぶした種のように見える部分が実で中に種があります。
苺という名がつく植物は野苺の仲間もあり、花は白のほかに蛇苺のように黄色い花をつけるものや、ピンクの花のものもあります。
また、いけばなの花材のきいちごと呼ばれるものはかじいちごで、春に白い花が枝の先につきます。バラ科でもキイチゴ属で、フランス語でフランボワーズと呼ばれるラズベリーも同様ですが、キイチゴ属に属するものは、ある程度の高さのある木も含め多数あり花も苺の花と似ているものが多いのです。
生徒さんの父上が定年退職後、北海道の帯広で苺の栽培農家になったと聞いた時は、苺を北で?と意外でした。
花が咲くと蜂をハウスに放って受粉させたのち40日前後で収穫できるそうです。
苺は近くの有名なお菓子の工場に納め、このお宅では6,7月と9月が一番忙しい季節です。
「帰省の時、その時期だとお手伝いで大変でしょう?」と聞けば「両親は苺に一切触れさせてくれず、私は収める箱を組み立てるくらい」というのです。
なかでもケーキの上にのせる苺は規格が厳しく色やサイズ、重さまで決められていて、味は一番最後かも、とこっそり教えてくれました。指紋も付けてはならず、素手で摘むので訓練をうけた方たちしか摘果ができないのだそうです。
しかし花の時、雄蕊の形でこれからできる実の形がわかるので形が悪ければ小さな花まで摘花をして無駄な手間を省きます。おいしい苺になるための花を咲かせるには長い日照時間と、温度の管理が重要です。
手のかけられた苺を使うショートケーキは他のケーキとはどこかちがう気がします。ふわふわした卵色のスポンジに白い生クリームと赤いイチゴの色が映え、この組み合わせは心を弾ませ特別な日にいただくのにふさわしく思えてくるからです。
晴れの日を飾る苺を目指して白い花は選ばれ、懸命に咲くのです。(光加)