朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」六月
朝日カルチャーセンター「カフェきごさい」句会。今月の兼題はカフェきごさいサイトより、六月の季語「茂」料理「夏わらび」花「薔薇」です。二座目は席題句会。
一座目
【特選】
水無月菓のせて皿の涼しかり 弘道
水無月は夏越の祓の時期に邪気を払うと食べられる三角の餅菓子。菓子の水無月とわかるように「菓」を入れたのだろうが、句の内容で十分わかるので余分な配慮。句の形を整えることはリズムを整えることで俳句には重要なこと。しっかり推敲を。「水無月をのせて涼しき硝子皿」など。水無月(旧暦六月)そのものが皿に乘ってゆれているような印象。
薔薇園の薔薇の迷路をぬけられず 隆子
薔薇ならではの一句。
【入選】
疎開して甘きものあり山桜桃梅 守彦
すっきりした作りだからこそ、甘いものに飢えていた切実な気持ちが伝わる。「甘きものあり」は立派。
草深き岸に弾むや渡舟 今日子
「弾む」は少しオーバーだが、草が茂りに茂った夏の川の様子が描かれた。「草深き」は季語にならないので「草茂る」。中七の切れはこの句の場合少々重い。「草茂る岸に弾んで渡舟」。
雨打ちて雫となりぬ薔薇の花 今日子
薔薇の花が雫となったというのはたいへん好いが、雨があたり雫のように散ったという構成は理屈。これは「雨打ちて」という上五によるもの。理屈を超えたい。「朝の雨雫となりて薔薇の花」。
ゴム長の里山ガイド麦の風 周作
実直なガイドさんの人柄までが思われる一句。「麥の風」がいい。
憂きことを丸呑みにせよ大鯰 隆子
主体が曖昧。「憂きことは丸呑みにして」「憂きことを丸呑みにせん」などなど。言いたいことは?
9・11グランドゼロに青嵐 弘道
「グランドゼロに」ではそこにただ青嵐が吹いていだけになる。「9・11グランドゼロや青嵐」。
ふり返る観音の慈悲や若葉風 弘道
振り返る様子の観音像だろうが、こう詠まれると若葉風に観音様が思わず振り返ったよう。「や」は不要、リズムで感じること。
二座目(席題・鮎 麦)
【特選】
手でぬぐふ汗は黄金や麦埃 隆子
「麦埃」がいい。
【入選】
麦秋の丘続きけり友逝けり 守彦
リフレインが活きている。
食み跡の岩を見よとや鮎の里 隆子
いただく鮎の美味しい証拠。
人類の朽ちて静かや夏落葉 光枝