きごさいカフェネット投句(8月)飛岡光枝選
「身を潜めいる」にだだならぬ暑さが表現されているが、「蝉も蚊も」の並列は必然性がなく弱い。より深く。「蝉も吾も身を潜めゐる酷暑かな」。
草の絮おもひもかけず遥かより 隆子
ひそやかに秋の空をゆく草の絮。「遥かより」では主体がぼやける。「草の絮おもひもかけず遥かまで」。
【入選】
シナモンと夕日で煮込む林檎かな 勇美
「夕日で煮込む」は少々無理がある。「シナモンで煮込む夕日の林檎かな」。
酷暑過ぐ痩身に刺さる蝉しぐれ 弘道
句がぶつぶつ切れてしまった。ことばの運びに留意したい。「酷暑過ぎ痩身を刺す蝉しぐれ」。
台風も地震もありぬ大八洲 涼子
「ありぬ」ではそのまま。「台風も地震もなんの大八洲」。
墨塗りし小学教科書敗戦忌 弘道
「敗戦忌」ではただの状況説明。この形ができてからが俳句のスタート、季語を離す。「墨塗りし小学教科書蝉しぐれ」など。
【投句より】
(桔梗ややまとなでしこ凛と立つ)
「なでしこ」も植物なので句がごちゃついてしまいます。「桔梗ややまとのをみな凛と立つ」など。
(稲妻や秘密めきたる窓の奥)
「稲妻や」は空、「窓の奥」は地上、それも奥となると視線が分断されて像が結びません。