浪速の味 江戸の味 2月、ぬくめ鮓
江戸前の握り鮓に対し浪速は箱鮓、巻鮓である。火を通したり、塩や酢や昆布で下味をつけ、生ものである握り鮓よりは持ちがよかった。行楽の弁当などに重宝である。
そのような夏の鮓に対し、京阪には冬ならではの鮓がある。ぬく鮓、ぬくめ鮓である。鮓飯に味をつけた椎茸、干瓢をまぜ、蓋付茶碗に盛り、好みで穴子海老などをのせ、蒸籠で蒸す。仕上げに錦糸卵をたっぷりとのせ、紅生姜を彩りに置く。別名茶碗ずしとも。最近は、見かけなくなったが、おすもじ屋のかどには、ぬくめ鮓の蒸籠が湯気を上げていた。
蒸すことで、酸味が柔らかくなる。あっさりと温かいぬくめ鮓は消化もよく、心までほっこりとさせてくれる。
蓋とれば湯気ほんのりとぬくめ鮓 洋子