浪速の味 江戸の味 2月、ぬくめ鮓
鮓は唐から伝わり、平安朝のはじめには広がっていたという。魚を用いた発酵食品である熟鮓である。魚の内臓をとり一夜漬けしたものに冷ました米飯を埋めるようにして重ね、重しをかけ発酵させる。夏の間に漬けこんだので夏の季語となった。発酵がもたらす酸っぱさは、酢を使うようになり手軽に鮓を作れるようになった。暑い時期に飯の防腐の面でも酢は有効である。
江戸前の握り鮓に対し浪速は箱鮓、巻鮓である。火を通したり、塩や酢や昆布で下味をつけ、生ものである握り鮓よりは持ちがよかった。行楽の弁当などに重宝である。
そのような夏の鮓に対し、京阪には冬ならではの鮓がある。ぬく鮓、ぬくめ鮓である。鮓飯に味をつけた椎茸、干瓢をまぜ、蓋付茶碗に盛り、好みで穴子海老などをのせ、蒸籠で蒸す。仕上げに錦糸卵をたっぷりとのせ、紅生姜を彩りに置く。別名茶碗ずしとも。最近は、見かけなくなったが、おすもじ屋のかどには、ぬくめ鮓の蒸籠が湯気を上げていた。
蒸すことで、酸味が柔らかくなる。あっさりと温かいぬくめ鮓は消化もよく、心までほっこりとさせてくれる。
蓋とれば湯気ほんのりとぬくめ鮓 洋子

