カフェきごさい「ネット句会」8月 《互選》+《飛岡光枝選》
連中=光尾・淳子・隆子・桂・裕子・弘道・南行・良子・すみえ・勇美・和子・雅子・都・光枝
(弘道選)
流燈会川は出合ひてまた離れ 雅子
夏帽の父が駅まで来てをりし 良子
腹割つて語り尽くさん大西瓜 南行
(裕子選)
隕石や大山椒魚覚醒す 勇美
星空のなごり摘みけりブルーベリイ 勇美
月光に花の投網や烏瓜 桂
(桂選)
流燈会川は出合ひてまた離れ 雅子
腹割つて語り尽くさん大西瓜 南行
この国に紫蘇や茗荷や冷奴 雅子
(隆子選)
幻の大船鉾が波を切る 裕子
夏帽の父が駅まで来てをりし 良子
うすれゆく母の記憶に敗戦日 裕子
(淳子選)
鳴き出してはやくたびれし蝉の声 光枝
月光に花の投網や烏瓜 桂
夏帽の父が駅まで来てをりし 良子
(光尾選)
幽霊の日ありて梅雨の鏡かな 光枝
夏帽の父が駅まで来てをりし 良子
あん蜜か葛切どちら京四条 弘道
(都選)
朝顔の蔓をみちびく声のあり 南行
夏帽の父が駅まで来てをりし 良子
アフリカの美しかりし裸かな 隆子
(雅子選)
鳴き出してはやくたびれし蝉の声 光枝
花梯梧しるべに来たれ父祖の魂 隆子
アフリカの美しかりし裸かな 隆子
(和子選)
鳴き出してはやくたびれし蝉の声 光枝
腹割つて語り尽くさん大西瓜 南行
それぞれの行きたい方へ赤蜻蛉 良子
(勇美選)
月光に花の投網や烏瓜 桂
夏帽の父が駅まで来てをりし 良子
この国に紫蘇や茗荷や冷奴 桂
(すみえ選)
月光に花の投網や烏瓜 桂
花梯梧しるべに来たれ父祖の魂 隆子
この国に紫蘇や茗荷や冷奴 雅子
(良子選)
隕石や大山椒魚覚醒す 勇美
霧満ちぬ蛍袋の道しるべ 和子
腹割つて語り尽くさん大西瓜 南行
(南行選)
星空のなごり摘みけりブルーベリイ 勇美
水打つてさても一人の夕餉かな 雅子
月光に花の投網や烏瓜 桂
朝顔の蔓を詠んだ句はたくさんありますが、蔓を導く声とは驚きました。そう言われれば確かに、何ものかに促されて蔓は伸びていくように思えます。断定して力強い一句となりました。
喧噪の去りて星降るプールかな すみえ
リゾートのプールだと少し綺麗すぎるので、学校のプールがいいでしょうか。昼間の子どもたちの声がうそのような、宇宙と一体となった静けさを湛えた水の器。無理のない言葉の運びが真実を感じさせます。
月光に花の投網や烏瓜 桂
繊細なレース編みを思わせる烏瓜の花。あれは月の光を捕らえるために広げたものだったのかと、読むものの心にすっと入ってくる一句です。
サングラス去年までとは違ふ街 勇美
いい意味でも悪い意味でも一瞬にして世の中が変わって見える時があります。句は今年の災厄を詠んだものだと思いますが、そうでなくても通じる普遍性があります。
【入選】
霧満ちぬ蛍袋の道しるべ 和子
霧に濡れてゆれる蛍袋。「霧の山蛍袋を道しるべ」。
腹割つて語り尽くさん大西瓜 南行
西瓜のように大きなお腹が目に浮かぶ愉快な一句。腹を割っても一物などはなさそうです。
梅雨明けや痺れを切らしスイカ買ふ 光尾
梅雨が明けたのなら、痺れを切らしていたのは昨日までのこと。そして、買うだけではつまらない。「梅雨明けや待ちに待つたるスイカ食ぶ」。ちなみに「梅雨明け」は夏、「西瓜」は秋の季語です。
水打つてさても一人の夕餉かな 雅子
淡々として日々のくらしのよろしさ。
山鉾を建てる声なき京町屋 弘道
何があっても休まない山鉾巡行のはずなのに、無念さが滲みます。「山鉾を建てる声なき京の町」。「京町屋」では観光ポスターのようになってしまうので、なるべく普通の言葉を。
幻の大船鉾が波を切る 裕子
夏陽炎のごとき大船鉾の迫力。
郭公や水まんまんと石の甕 隆子
郭公の声が水の面に響くようです。
夏帽の父が駅まで来てをりし 良子
井上ひさしの戯曲「父と暮らせば」を思いました。「夏帽」が効いています。
この国に紫蘇や茗荷や冷奴 雅子
文句なく美味しそう。
うすれゆく母の記憶に敗戦日 裕子
思いの籠った一句ですが、「に」があまりにも説明的なのが惜しい。「敗戦日母の記憶のうすれゆく」。