カフェきごさい「ネット句会」(11月) 互選+飛岡光枝選
(連中)
ひろ女 隆子 桂 雅子 すみえ 涼子 南行 光尾 都 勇美 裕子 和子 良子 弘道 光枝
【互選】
弘道選
蛇穴へこの世の憂さはすべて絶ち 桂
後の月欠けたるものの懐かしき 隆子
歌舞伎座の裏は下町十三夜 ひろ女
良子選
父追うて三冠征す菊日和 都
九条葱ざつくり刻み二人鍋 弘道
歌舞伎座の裏は下町十三夜 ひろ女
和子選
鳩の出ぬ柱時計や後の月 ひろ女
東京のしづかな朝鳥渡る 光枝
仕舞ひ置くヘルスメーター馬肥ゆる 涼子
裕子選
独り碁を終へて余寒の饂飩かな 弘道
九条葱ざつくり刻み二人鍋 弘道
この年の縺れし時間藪枯らし 勇美
勇美選
東京のしづかな朝鳥渡る 光枝
後の月欠けたるものの懐かしき 隆子
口を出た言葉戻らぬそぞろ寒 すみえ
都選
葡萄酒を醸すがごとく謀 隆子
東京のしづかな朝鳥渡る 光枝
十三夜一茶が来ている双樹庵 裕子
光尾選
足柄の月やあばたの大いなる 隆子
後の月欠けたるものの懐かしき 隆子
歌舞伎座の裏は下町十三夜 ひろ女
南行選
摘んできし露の黄菊を膾かな 光枝
遺されし日記ひもとく十三夜 裕子
この年の縺れし時間藪枯らし 勇美
涼子選
舞茸の花の一株切り分けん 雅子
東京のしづかな朝鳥渡る 光枝
後の月欠けたるものの懐かしき 隆子
すみえ選
舞茸の花の一株切り分けん 雅子
摘んできし露の黄菊を膾かな 光枝
星ひとつ連れてまどかや後の月 涼子
雅子選
足柄の月やあばたの大いなる 隆子
後の月欠けたるものの懐かしき 隆子
妹を橋まで送る十三夜 良子
桂選
妹を橋まで送る十三夜 良子
舞茸の花の一株切り分けん 雅子
海鳴りを辿りし果ての月の道 和子
隆子選
舞茸の花の一株切り分けん 雅子
東京のしづかな朝鳥渡る 光枝
ひんがしに羽衣のごと後の月 すみえ
ひろ女選
父追うて三冠征す菊日和 都
後の月欠けたるものの懐かしき 隆子
遺されし日記ひもとく十三夜 裕子
【飛岡光枝選】
(特選)
舞茸の花の一株切り分けん 雅子
天然舞茸を讃えた一句。「舞」と「花」の字が呼応します。「切り分けん」と実感ある句にして上々。
この年の縺れし時間藪枯らし 勇美
コロナだけではない様々な出来事が思われる一句です。「藪枯らし」が静かに繁茂していく恐ろしさ。
(入選)
落花生ぼつちの幾つ十三夜 裕子
少し肌寒い十三夜の感じが出ています。原句は「落花生のぼつち幾つも十三夜」。
待ち遠し夜食は父の味噌握り ひろ女
味噌握りのなんと美味しそうなこと。原句は「夜食待つ父の得意の味噌握り」。ことばを整理して、伝えたいことがより伝わるように。
鳩の出ぬ柱時計や後の月 ひろ女
上五中七の微妙な寂寥感と十三夜の月が呼応します。
猪垣の内に老婆や日向ぼこ 桂
猪からすれば、老婆は垣の内に捕らえられているよに見えるのでは?「日向ぼこ」がいい。
星ひとつ連れてまどかや後の月 涼子
この「まどか」は真ん丸の意味ではなく、穏やかの「まどか」です。「連れて」が句の内容にやさしく呼応します。
十三夜友の少しく欠けてゆき 和子
十五夜にはない思い。
十三夜一茶来てゐる双樹庵 裕子
一茶が懇意の双樹庵。「十三夜一茶寝転ぶ双樹庵」など「来てゐる」をもう一工夫しても。原句は「十三夜一茶が来てゐる双樹庵」。
口を出た言葉戻らぬそぞろ寒 すみえ
よく言われる内容ですが、「戻らぬ」が直接的でよく伝わります。
後の月欠けたるものの懐かしき 隆子
調べがよく出来ている一句ですが、後の月は満月に少し欠けた月なので付きすぎの感は否めません。他の季語を探してみてください。
九条葱ざつくり刻み二人鍋 弘道
一人鍋でなくてほっとしました。「ざつくり」で美味しい鍋になりました。
夏の光包んで仕舞ふTシャツも 光尾
夏の終わりの感じがよく出ました。原句は「夏の光包んで仕舞うTシャツと」。