カフェきごさい「ネット投句」(二月)飛岡光枝選
山の眠りを守るかのように流れるせせらぎの静寂。「時刻む」が秀逸。原句は「時きざむせせらぎの音山眠る」。
【入選】
大根煮て家中匂ふ未だ寒し 守彦
煮大根の匂いに春を待つ思いが籠った率直な一句です。
春一番とりどりの絵馬かき鳴らし 勇美
原句は「とりどりの絵馬かき鳴らし春一番」。「春一番」の置き方次第で俳句の力がぐっと増します。
連翹の飛び立ちさうな日和かな 勇美
ここまではみんなが感じる範疇、ここからもう一歩前へ。「連翹の飛び立つてゆく日和かな」。
にぎやかに連翹の散る疎水かな 涼子
「にぎやかに」が連翹らしい。
花を待つすべらんうどん平らげて 涼子
「平らげて」に浪速の勢いがあります。原句は「花待たむすべらんうどん平らげて」。
雪形の馬の脚より細りゆく 弘道
雪形の状態を詠んだ句はたくさんありますが、馬の脚とまで細かく詠んで新鮮かつ愉快。原句は「雪形の馬の脚より細りけり」。
魞挿すや湖面を揺らし小舟ゆく 弘道
ゆったりとした初春の湖の情景。原句は「魞挿すや湖面を揺らす小舟かな」。魞を挿す作業と小舟の関係をよりはっきりと描きたい。
草萌ゆる柔らかき土踏んでゆく 和子
どこまでも歩いて行けそうな春の野山。原句は「柔らかき土踏む恵み草萌ゆる」。
【投句より】
「春めくやこの地球のこの国で」
季節が廻る喜びを大きく捉えた意欲作ですが、この句の場合は「春めく」という季語が曖昧で像を結びません。「春の雨」など具体的な季語を置いてみましょう。