a la carte_菫(すみれ科)
この花がいけばなの作品に登場することが少ないのは、その丈が短いからでしょうか。でも、たまに花屋さんで小さな器に菫がぎゅっと束ねられて売っているのを見かけると、つい買ってしまいます。
この小さな可憐な紫の花は古くから世界中で愛され、現在に至るまで歌や詩に何度登場したことでしょう。日本では万葉集にも歌われています。温帯が原産地と言われていますが、何処をどう伝わって世界中に広まったのでしょうか。今では各地に400種類もの菫があるといわれています。
「コートに菫を」という歌があります。ビリー・ホリデーやフランク・シナトラも歌っています。
「Violets for your furs」(Matt Dennis 作曲・Tom Adair 作詞)。ここではコートを「furs」といっているので毛皮のコートでしょうか。
あれは雪の舞うマンハッタン
僕は菫を買った 君のコートにつけてもらうために
雪の一片が菫の花びらにとまり やがてとけて消えた
僕は君のために菫を買った
君はその菫をコートにピンで留め それを道行く人に高く挙げて見せた
そしてかわりに とびきりのスマイルを僕にくれた
その日からだった 僕たちが恋に落ちたのは
内容はかいつまんでみればこんなものですが、やはりこれは菫でなければいけません。菫の改良品種としてパンジーがありますが、パンジーではあり得ません。時代が時代だからこそ、ロマンチックでおしゃれなこの菫の歌を、何時かこの季節に歌ってみたいと思っています。(光加)