浪速の味 江戸の味 四月 イカナゴのくぎ煮(浪速)
イカナゴは成長すると20cmほどになる小魚です。関西では、1月ごろ孵化し3月の初めごろ、4cmほどになったイカナゴをシンコと呼びます。シンコの大きさになるとイカナゴ漁の解禁です。
瀬戸内で獲れたシンコが明石の漁港などに水揚げされます。明石の商店街にはキロ売りのシンコが並びます。神戸や大阪の人は、イカナゴ漁の解禁を待って「くぎ煮」を作るためシンコを買いに行きます。大鍋で「くぎ煮」を作るのが春の楽しみです。
買ってきたシンコはまず、ざっと水洗いします。笊にあけて水気をとります。大鍋に醤油、みりん、酒、ザラメを煮立たせ生姜のみじん切りを入れます。シンコは小分けにしてぱらぱらと入れてゆきます。強火で15分ほど灰汁を取りながら煮こみますが、決してかき混ぜません。シンコが折れるのを避けるためです。さらに落とし蓋をして煮汁がなくなるまで煮詰めます。最後に鍋を振って上下を返して仕上げます。つやつやと釘のような形に仕上がるので、まさに「くぎ煮」だと実感します。
近年はイカナゴの不漁が続き、スーパーの魚売り場でも午前中に売り切れの札が出ていました。今年のイカナゴ漁は3月6日に解禁になりましたが、はや20日に打ち切りになりました。貴重な水産資源を守るためです。イカナゴのくぎ煮は関西の春を代表する料理です。炊きたてのご飯にもお酒のおつまみにもよく合います。
大鍋にくぎ煮につまる春の昼 洋子