カフェきごさい「ネット句会」4月 互選+飛岡光枝選
【連中】雅子 裕子 光尾 隆子 都 涼子 和子 勇美 桂 あきえ 良子 弘道 すみえ 光枝
良子選
うすうすと真昼を月の出開帳 隆子
我らみな地に生きるもの桜咲く 涼子
寄り添へぬ心と心芋を植う 桂
裕子選
AIで喋る子犬と暮らす春 雅子
出開帳さくらの蕊を踏みながら 隆子
上野まで母を迎へに初桜 良子
あきえ選
銀嶺や桜の海に浮かびたり 和子
雪洞に花浮かびおる疎水べり 弘道
鶯や真白きシーツ干し終へて 涼子
桂選
よなぐもり湖底の龍は腹空かせ 都
黄砂降る疫つぎつぎと姿かへ すみえ
朝起きて一杯の水万愚説 裕子
すみえ選
よなぐもり湖底の龍は腹空かせ 都
燕の子土間を汚して巣立ちけり 光枝
寄り添へぬ心と心芋を植う 桂
都選
我ら皆地に生きるもの桜咲く 涼子
銀嶺や桜の海に浮かびたり 和子
先送りの北窓開く校了日 あきえ
涼子選
よべは月美しかりし蒸鰈 隆子
銀嶺や桜の海に浮かびたり 和子
春雷や子ども俳句の恐ろしく 光枝
勇美選
花散つて今朝はま白き花の道 雅子
白木蓮や母の真珠とおなじいろ あきえ
病癒ゆ草餅の草噛みしめん すみえ
雅子選
よべは月美しかりし蒸鰈 隆子
春光の滴たらたら鴨の嘴 桂
春雷や子ども俳句の恐ろしく 光枝
弘道選
うす暗き土間なつかしや草の餅 都
夜べは月美しかりき蒸鰈 隆子
帰らむか生家の辛夷咲くころぞ 都
隆子選
花散つて今朝はま白き花の道 雅子
寄り添へぬ心と心芋を植う 桂
病癒ゆ草餅の草噛みしめん すみえ
和子選
一切をしばし覆ひぬ花万朶 勇美
花筏ほどかぬほどの細き雨 勇美
桜貝すなごは小さく歌ひけり あきえ
光尾選
一人づつ名前呼ばれて菫笑み 和子
花筏ほどかぬほどの細き雨 勇美
出開帳さくらの蕊を踏みながら 隆子
白木蓮はその形を燭台などにたとえた句はたくさんありますが、その色を真珠色として新鮮。そして、その真珠が母の真珠とは何とも深い思いを蔵した一句となりました。原句は「白木蓮や母の真珠とおなじいろ」。「はくれん」と読ませたい場合は、「白木蓮は」。
花散つて今朝はま白き花の道 雅子
言葉の巧みな運びにより一本の白い道が目の前に浮かんできます。
畑に人信濃の里は花あんず すみえ
上五の「畑に人」で命が吹き込まれました。すっきりとした句の姿がいい。
【入選】
はるかなるウイグルの民黄砂舞ふ 光尾
今年は東京でも黄砂が降りました。身体に影響がある方もいて深刻なことですが、彼方の砂漠からの来訪者と思うと胸が熱くなるものがあります。句は
その地の人々へ思いを馳せて大きな一句となりました。原句は「ウイグルの民何思ふ黄砂舞ふ」。
オフィスへ履くスニーカー朝桜 涼子
ニューヨーカーの通勤時の足元がパンプスからスニーカーになったのは、同時多発テロの後。日本では大震災の後でしょうか。それにマスクが加わり現在はよりたいへんですが、毎朝桜が応援してくれているようです。原句は「オフィスへと履くスニーカー朝桜」。
コロナ禍を桜前線駆け抜ける 裕子
いつの世も変わらない自然のたくましさ。ただ、今年は多くの地域での早すぎる開花が気になります。原句は「コロナ禍や桜前線駆け抜ける」。
よなぐもり湖底の龍は腹空かせ 都
黄砂という大きな自然現象と龍が呼応する一句。そういえば龍は何を食べるのでしょう。
一人づつ呼ばれる名前すみれ笑む 和子
新入生の最初の点呼を思いました。大切な名前。原句は「一人づつ名前呼ばれて菫笑み」。
黄砂ふる疫つぎつぎと姿かへ すみえ
まさに今、全世界の思い。季語が的確です。
出開帳さくらの蕊を踏みながら 隆子
出開帳のしめやかながら人々の華やいだ心映えがよく描かれています。ただ季重なりは慎重に。
春光の滴たらたら鴨の嘴 桂
鴨の嘴からの水滴や泥を詠んだ句はたくさんありますが、「春光の滴」として新鮮。春の鴨の句。
鐘楼へ上る石段花ふぶき 良子
きちんと描けた一句。情景がよく見えます。
人の来ぬ堤に花の咲き満る 雅子
今年に限らず、あまりに見事な桜を一人で見る時のとまどいが感じられます。
全山の花雲揺るる吉野かな 弘道
「全山」と打って出たところがいい。原句は「全山に花雲揺るる吉野かな」。