カフェきごさい「ネット投句」(4月)飛岡光枝選
その土地土地の笹で、粽に移る香りも違うのでしょう。あおあおとした笹の葉を開く時の喜びが伝わります。「この笹のこの香故郷の粽かな」もある。
金婚の一献染みる春の宵 弘道
「一献」とはこういう酒に使う言葉だと思いました。深々とした春の宵の一句。
【入選】
単座して散りゆく花の中に居る 守彦
ゆったりとしたリズムが、まさに花びらの散り初めのよう。
手作りのくぎ煮届くや春の風 和子
いかなごの獲れる瀬戸内の海から吹いてくる春風。原句は「手作りのくぎ煮連れ来し春の風」。
しんこ漁明石大橋股にかけ 涼子
春を告げるいかなご漁の活気が目に浮かぶ一句です。いかなごの稚魚を西では「しんこ」と呼び珍重しますが、鰶(このしろ)の幼魚も「しんこ」と呼ばれ、季語としてはこちらがよく知られているので「いかなご漁」としても。
春の灯やほの暗き部屋ほつとする 守彦
春の夕べ、ほうと灯をともした時の思い。
月光にアスパラガスは背を伸ばす 涼子
「背を伸ばす」がまるで動物のようで、土から伸びたアスパラバスの様子によく合っています。
新緑の中にゆらゆら山の藤 和子
山藤の様子を捉えた一句ですが、どちらも大きな季語の夏の「新緑」と春の「藤」の同居は難しい。