カフェきごさい「ネット投句」(5月)飛岡光枝選
白い花穂をなびかせて吹く湿気を帯びた風が茅花流し。そのけぶるような様子と自分の思いが上手く一句となりました。
【入選】
枇杷の実や昭和の窓の軋む音 勇美
高級な枇杷は贈答品として高値がつきますが、庭木としてもお馴染みの枇杷は、身近なおやつでした。句はそんな庭がある木造の家屋。「軋む」と昭和を音で表現して新鮮。
麦秋やハーモニカ吹き子ら帰る 弘道
一読、風景が目に浮かびます。これは作者が外から子供たちを見ている句ですが、「ハーモニカ吹き帰る夕」などとすると自分が句のなかに入ります。
柏餅2個入りパック買ひにけり 弘道
現代の柏餅。これが桜餅でもうぐいす餅でも上手くいきません。柏餅の元気さが生きる句です。数字も「2」としたのがいい。
新しき歯に晴々と青胡瓜 勇美
人間の歯は残念ながら生え変わらないので、「新しき歯」とは乳歯、あるいは大人の場合は義歯でしょうか。「晴々と」は気持ちはわかるのですが、もっと具体的だとより
胡瓜の「青」が生きると思います。「新しき歯にしやきしやきと青胡瓜」など。
鰹船一本釣りの背が並ぶ 涼子
鰹の一本釣りの様子を丁寧に描きました。動きがないので写真のようなのが残念。「鰹船一本釣りの背が躍る」など。