カフェきごさい「ネット投句」(7月)飛岡光枝選
【特選】
うみほおづき今は遠くに行きし人 和子
海酸漿はどこか夏の懐かしさを纏っています。句の中七下五は季語によっては曖昧に感じるフレーズですが、この句ではとても活きています。「うみほほづき」、旧かな確認を。
【入選】
バンガロー涼しき星に寝まりけり 涼子
句の形はしっかり出来ていますが、「バンガロー」ではただの場所の説明、かつ夏の季語なので避ける工夫を。
玉解きて風を捉へる芭蕉かな 涼子
こちらも形はよく出来ていますが、「捉える」が少々曖昧で普通。もう一歩踏み込みたい。
夏の雲肩肘を張ることもなし 弘道
夏の雲にもらう大きな安らぎ。夏の雲の句として新鮮です。原句は「肩肘を張ることもなし夏の雲」。出来上がってからもあれこれ見直したい。
今はもう望郷のなか夏の山 弘道
思い出のなかに聳える青々とした夏山。原句は「今はもう望郷のみぞ夏の山」。より大きく、おおらかに。
青葉風浴びて妻の手巻き寿司 弘道
風とあれば吹いているし、吹かれている(浴びている)。「青葉風妻の自慢の手巻き寿司」などより大切な描写に言葉を使いましょう。
華やかに開く湯の中鱧の花 和子
牡丹鱧のこの様子は多くの句にありますが、この句はことばが生き生きと過不足なく描かれています。
夏芝居電光石火殺陣決まる 和子
汗みずくになりながらの熱演の感じはしますが、普通の芝居との差があまり感じられないのが惜しい。原句は「夏芝居電光石火殺陣決まり」。