カフェきごさい「ネット投句」(十二月)飛岡光枝選
三日月を切れ長の目と表現しました。原句は「冬三日月切れ長の目に捕らへらる」ですが、捕らえられたように感じた思いは、短い俳句ではそのまま述べてもなかなか伝わりません。
老木や冬の紅葉を手で落とす 裕子
老木をいたわるように手で払う紅葉の美しさ。原句は「老木や冬紅葉を手で落とす」。「こうよう」と「もみじ」の音の手ざわりの違い。
初雪に老いの華やぐ生地かな 弘道
故里にいる心やすさに心が華やぎます。 「初雪」がいい。原句は「初雪や老人華やぐ生地かな」。
子の残すクリスマスツリー飾りけり 弘道
育った家を旅立つ子に思いを馳せる聖夜です。
男らのバー街漁るクリスマス 弘道
三十年くらい前の日本の様子でしょうか。原句「男らのバー街あさりしクリスマス」は過去形で昔のことだとわかりますが、この句の場合は現在形にして句をいきいきと。
【投句より】
(鰭酒の焦げの旨さや雪催)
形はよく出来ていますが、決めポーズのようで作者の思いがあまり伝わらないのが残念。季語ふたつが句のなかで均等なのも迫力に欠ける要因です。
(冬の月寄り添う星よ口ほくろ)
先日の、月と木星の様子でしょうか。星が口元の黒子のようだという面白い着眼点ですが、要素が多く言いっぱなしになってしまったのが残念。旧仮名遣いでしたら「寄り添ふ」。