朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」十一月
新宿の朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。十一月の兼題はサイトより、今月の季語「十一月」、花「冬の菊」、江戸の味「葱鮪鍋」です。
【特選】
あの人も薄墨文字の冬の菊 裕子
年末が近くなると届く喪中はがき。知り合いのご家族の不幸を悼むことがほどんどだが、この年は自身のよく知る方の名前が薄墨の文字で届いた。「薄墨文字の冬の菊」と言い切って、亡くなった方の人柄にまでも思いが至る一句となった。
刈らずをく小さな日なた冬の菊 涼子
冬の菊が咲く様子を「小さな日向」と表現。一句のリズムが心地よく、心に届く。
【入選】
母の墓冬満月に包まれて 弘道
寒々と詠まれることが多い冬の月だか、この句はご母堂をやさしく包む澄み切った光を放つ冬の月。
紅葉に染まる広島叫び止まず 和子
原句は「紅葉に染まる広島血の叫び」。紅葉に「血」を感じることはあると思うが、広島が強いだけに、思いを強調しすぎるとかえって思いが伝わりにくくなる。より即物的に読んでも静かな強さの句になる。
冬菊や母が作るは筑前煮 裕子
お母さまの得意料理なのかもしれない。「冬菊」と響き合う「筑前煮」。
葱鮪鍋窓に三崎の灯のゆらぐ 涼子
鮪に三崎は少々単調だが、湯気に温まる部屋での葱鮪鍋が美味しそう。
陽だまりを独り占めして冬の菊 和子
冬枯れの季節に咲く明るい色の菊は、そこだけ日差しが注ぐような感じがする。その様子をよく捉えた。原句は「陽だまりを独り占めせむ冬の菊」。
ふるさとにとどまりし友冬耕す 弘道
人生の分岐点に思いを馳せる冬のひととき。「冬耕」がいい。
天下人名乗りあげたりななかまど 和子
回りを圧倒するように色付くななかまど。ななかまどの句として新鮮。
膏薬の匂ふ家なり冬の菊 勇美
たいへん感じはあるが、匂いに匂うものの取り合わせは避けたい。季語一考を。
枯菊の枯れて自由となりにけり 勇美
少々理屈ぽいが、実感がある。原句は「枯菊の枯れて自由となりぬかな」。句は現在枯れている菊の思いを描いているが、「白菊の枯れて自由となりにけり」と、盛んな様子との対比を描くこともできる。
冬の菊光をふるふ昨日今日 光枝