今月の花(三月)スイートピー・宿根スイートピー
ホームステイ先の家がどんな家だったか、家族構成はどうだったかといったこと以上に鮮明に思い出すのは、三角形にたてた棒の間にスイートピーが這い上がり、花を咲かせていた裏庭の光景です。
それまでもいけばなは習っていたものの、地植えのスイートピーが咲いている光景は見たことがありませんでした。春、お稽古に配達された包みを開くと白や赤、ピンクなどの鮮やかな色や香りに、周囲にいた人たちが「あ、スイートピー!春ね!」とどっと沸いたものです。
この花が北欧のデンマークで八月に咲いていたのですが、日本に比べで緯度も北にあたるここでは夏に咲くのだろうと思いその時は何の疑問もわきませんでした。
あの時に咲いていた薄ピンクのスイートピーが宿根スイートーピーではなかったかと思いはじめたのは、この花が耐寒性があることを知ったここ数年の事です。
近頃は晩春から店頭で見かけることもある宿根スイートピーは、一年草である一般のスイートピーと異なり冬を超す多年草です。丈の高い器に茎ごと無造作にいけても、垂れ下がる長さが自然の勢いを語ってくれます。
花の色はスイートピーと同様、白,ピンク。紫などがあります。ふくよかなマメ科の蝶形の花は小ぶりで花弁はやや厚く、一年草のスイートピーに比べて香りはぐっと控えめです。葉は細長く、巻きひげの出ている茎には翼(よく)があります。いけるときは折れやすいので気を付けます。
巻きひげは支柱に絡みついてぐんぐんと伸び、二メートルを超してもさらに上がっていきます。優しげで静かなイメージの花を咲かせるこの植物ですが、動物的な面も持っているのだと気づかされました。
今では確かめるすべもなく記憶の中にしか存在しないデンマークの小さな町のスイートピーは、果たして宿根スイートピーだったのだろうか。心に引っかかったままの小さな謎のひとつです。(光加)