浪速の味 江戸の味 7月【鱧鮓】(浪速)
今年は祇園祭の山鉾巡行、天神祭の陸渡御、船渡御も行われるので、コロナ禍で神事のみとなっていた関西の夏の祭に本来の賑わいがもどってきそうです。あまり密にならぬようにと思いつつもやはり、熱気に包まれた祭は心躍ります。
祭鱧とよばれるくらい、関西の夏祭に鱧は欠かせません。夏が旬の白身の魚で、全長1メートルの円筒状で、口が大きくのこぎり状の歯を持ち、かみつきます。「食む(はむ)」がなまってはもになったとも言われます。小骨が身と皮の間に斜めに入り込んでいるので、鱧切り包丁で、小骨を切っていきます。
成分は鰻に似ていて、白身魚にしては脂肪含有量が多い旬の鱧は、照り焼き、天ぷら、湯びき鱧などどのように料理してもおいしいのですが、お勧めは「鱧鮓」です。照り焼きの鱧をのせた棒鮓を食べやすく切り分けたものです。甘辛いタレをつけて焼いた鱧と鮓飯がよく合います。祭見物の最中に手軽に食べられますし、箱に入った鱧鮓はみやげにも重宝します。
祇園祭や天神祭の思い出に登場するまさに祭鱧の料理だと思います。写真の鱧鮓は創業300年を超える大阪鮓の「すし萬」の鱧鮓です。大阪鮓と言えば箱鮓で、一手間かけた魚が鮓飯と一体となり風味を増します。見た目はそれこそ宝石箱のようです。鱧鮓は棒鮓で、鱧と鮓飯の間に山椒の実が少々。この山椒の実が食欲を増進させます。鱧は鰻より淡泊で、骨切りしてあるので炙ると身が開きます。ごつとした風味が暑気払いにもよさそうです。
鱧鮓や三年ぶりの渡御を見に 洋子