浪速の味 江戸の味(9月)鷹の爪【浪速】
暦の上では秋になりましたが、暑い日が続いています。幸い食欲が落ちることもなく、痩せることもなく過ごしていますが、夏バテ気味の方には、香辛料の効いた料理が食欲をそそるのでお勧めです。唐辛子はピリ辛料理には欠かせません。ナス科の一年草。熱帯アメリカ原産とされ、白い花の散った後の青い実が熟れてだんだん赤くなり、一面真っ赤になった唐辛子畑は壮観です。摘み取った唐辛子を干して保存できるようにします。
大阪府堺市の「堺市史」によると、堺市中区福田は、江戸時代から唐辛子の「鷹の爪」の一大生産地でした。実が小さく、先が尖った形が鷹の爪に似ているのでその名があるそうですが、平賀源内が72種の唐辛子について解説している中で、「食するにはこれを第一とすべし」と記述しているとのこと。
現在国内で流通している唐辛子はほとんどが外国産や他の品種です。約1%の国内産唐辛子の中でも、堺鷹の爪は日本に唯一残る一節に一つずつ実をつける純系品種です。3~4㎝の小ぶりな唐辛子ですが、外国産の約3倍の辛さがあり香りがよいのが特徴です。その特産品も摘み取りに手間がかかるため、農家が栽培をやめていったそうです。
このままでは、堺鷹の爪は作られなくなってしまうと危機感をもった生産者で販売もされる方が尽力され、交配で品種が変わらないよう完璧に管理された畑で栽培を続け、きびしい条件をクリアしなければならない「なにわ伝統野菜」として認証されるまでになりました。掲載した写真は「なにわ伝統野菜」に認証された折の報道資料です。一節に一つかわいい赤い実が天を向いてついています。
日本は食料の自給率が低く、外国産に依存していることは知っていたつもりでしたが、国産唐辛子がこれほど少ないとは思いませんでした。手間がかかり採算がとれないと、伝統ある特産品もだんだん作られなくなるという現実を消費者も知ることが大事だと思いました。堺鷹の爪の魅力を広く知ってもらえたらと思います。そして料理に利用してその味、香りを楽しみたいと思います。
ペペロンチーノ味の決め手は鷹の爪 洋子