朝日カルチャーセンター「カフェきごさい」句会(九月)
新宿朝日カルチャーセンター「カフェきごさい」句会。今月の兼題はサイトより九月の季語「台風」、花「野ばらの実」、浪速の味「鷹の爪」です。
【特選】
台風を睨む一徹鬼瓦 勇美
台風が頻繁に来る沖縄の屋根はシーサーが守っていますが、句の家は鬼瓦が守っています。ありそうで無かった台風の新鮮な一句。
【入選】
天の川降り注ぎたり山の小屋 和子
天の川が降り注ぐとはなんと豪勢なのでしょう。内容はよくわかるのですが、句の形が少々不自由なのが惜しい。また「山の小屋」と「山小屋」は違うので注意しましょう。「山小屋へ降り注ぎけり天の川」など。
吊るされて空を引つ掻く鷹の爪 勇美
青空に揺れる鷹の爪が鮮やかです。ただ、引っ掻くとまで言うと爪との理屈が見えてしまうので深みが無くなってしまいます。普通の言い方を工夫してみましょう。
学校へ秘密の近道野ばらの実 勇美
子供は誰でも自分だけの(と思っている?)秘密の近道を持っています。「野ばらの実」がよく効いています。原句の表記は「学校へ秘密の近みち野薔薇の実」。
鷹の爪湯治の窓を彩れり 勇美
宿の窓にゆれる鷹の爪は、香辛料として湯治客の身体を癒すだけでなく、目からも元気にしてくれるようです。鄙びた温泉地の鮮やかな一点。
野分け去り果樹は裸で並びけり 和子
丹精込めた果実の収穫を目前に、台風が襲うことがよくあります。呆然と立ちすくんでいるような果樹の様子。「裸で並ぶ」に冷徹な目が感じられて奥深い一句となりました。
颱風にいなないてゐる摩天楼 勇美
こちらは大都会の台風。摩天楼がいななくという鋭い観察眼。中七の「ゐる」が少々間延びするので、できれば消す工夫を。「颱風に一夜いななく摩天楼」など。
女王の眠り安かれいばらの実 光枝