浪速の味 江戸の味(11月)柚子【浪速】
寒くなってくると鍋料理の登場する回数が増えます。ここで活躍するのが柚子です。ポン酢の柚子の香りに食欲が増します。
大阪の箕面市北部の止々呂美(とどろみ)地区は、実生(みしょう)の柚子の産地として有名です。接ぎ木の柚子の木は5年ほどで収穫できるのですが、種から育てる実生の柚子は実をつけるまで時間がかかります。「桃栗三年、柿八年、柚子の大馬鹿十八年」と囃され「そんな言い方はないやろ」と思いますが、じっくり育った実生の柚子は大きく香りがよく保存がききます。それだけに収穫が待ち遠しい貴重な柚子なのです。
江戸時代中頃の箕面では、蜜柑が栽培されていたようです。止々呂美地区では明治時代から柚子が特産品になりました。晩秋の季語になっていますが、収穫は11月中頃から12月中頃にかけて行われます。木の枝には、長く鋭い棘があります。実が棘に触れると傷がつき茶色く変色します。商品価値を下げるので、収穫前に棘を切り落としたり手袋をはめて注意深く収穫作業をします。
吸い物に表皮を浮かべたり、柚味噌、柚釜、柚餅、マーマレード、柚子のシフォンケーキなど、さまざまな料理に使われます。果汁も皮も利用できます。もう少し先になりますが、冬至の日には無病息災を祈り柚子湯に入ります。湯上りの柚子茶でさらに身体が温まります。今年は止々呂美の実生の柚子で元気に冬を過ごしたいと思います。
山里に実生の柚子の熟るるころ 洋子