今月の花(三月) ミモザ
コロナのため海外に行けなくなった私は現在、世界の国々の門下たちと画面を共有しながら作品を講評するクラスをしています。メンバーは、長年日本のいけばなを勉強し先生の資格を持っている人ばかりです。
コロナ前はたびたび来日してクラスに参加したり、こちらから外国へ出向いてワークショップをしていたメンバーは、日本に一時帰国でお稽古に復帰したという方もいます。まさかこんなに長くこの方法でのレッスンが続くとは思いませんでした。
メンバーの作品に「少し枝を前にもってきて」とか、「花を思い切って短くしましょう」などのアドバイスをしながらレッスンを進めます。英語で話しながら、しかも画面を通した講評がベストではないことは承知しています。でもマイナスな面だけではありません。
1月末、このオンラインのクラスのテーマの一つは(花を主に使っていける)でした。開始数時間前に送られてきた写真には、2人の生徒が色鮮やかなミモザをいけていました。ロンドン在住の生徒と、ドイツのアーヘンの生徒の作品です。
ロンドンのKさんはミモザの葉をすっかり取って、黄色の塊を作っていました。画面上に集まったメンバーが早速、「ずっと寒かったと聞いているけれど、ロンドンでは今ミモザは外に咲いているの?」との質問に「花屋のスタンドにありました」という答え。ドイツのアーヘンに住むUさんは「私も花屋さんで見て、ついほしくなって」とのことでした。
「ミモザはオーストラリアの国花なのよ」と入ってきたのは、南半球のオーストラリアはシドニーのSさん。「でも、今はないけど」と、画面の向こうで彼女は「だって外は暑くて暑くて」と白いタンクトップの肩をすくめました。オーストラリアは夏なのです。
Sさんはたくさんの門下にいけばなを教えていることもあり、いつも斬新な作品を作ります。「ミモザをいけたあなたの作品も見てみたい、写真ある?」と私は聞きました。すると、ミモザは何種類もあり、いつも周りにあるので当たり前すぎて作品はないかもしれない、という返事に他の参加者一同は驚きました。
マメ科のミモザアカシアには1350近くの種類があり、そのうち1000種類近くがオーストラリアにあります。冬に花が咲くものが960種類もあり、残りは他の季節に咲いている、と言われれば確かにこの国の方には珍しくないかもしれません。
この国花は、2000年のシドニーオリンピックの勝者に送るブーケには採用されませんでした。アレルギーを起こす人がいるそうで、実は私もその一人。春が来てミモザがきれいと細かい葉を取りだしたとたん、目がかゆくなってくるのです。
ミモザアカシア、英語名ワットルについてはいろいろと興味深い話があるとのSさんの言葉に、北半球の私たちがますます興味をひかれたのも、オンラインならではの楽しい展開なのでした。(光加)