今月の花(七月)ブルーベリーの実
「やっぱりブルーベリーパイにするわ」という親友に思わず「私も!」とウエイターを振り返りました。久しぶりの東京の老舗ホテルのカフェ。ブルーベリーパイはこの店の名物です。
パイの表面の交差したパイ生地の下に見える濃い紫のブルーベリーのフィリングは約半世紀前の開店時から同じレシピで作られているそうで、すこしシナモンが入り酸味とのバランスもよく、甘すぎないところが私たちのお気に入りです。
子供の頃はそんなパイがあるとは全く知らず、ましてやブルーベリーが何なのかもわかりませんでした。いけばなを初めた当時も花材として登場することはなく、ここ数年いけられるようになりました。
今でも都会ではスーパーに売っている実は別として、花屋さんで鉢植えで売っているものを見かけるくらいでしょう。一方長野県をはじめ、ブルーベリーを作っている農家は各地にあり、いちごやリンゴ、ブドウなどとならびブルーベリー狩りを売り物にしている生産農家もあります。
ブルーベリーはツツジ科です。枝に鋏を入れようとすると思ったより硬く、濃い茶色のつつじの枝も切る時は一瞬抵抗されるような感触が手に残り、まさしくブルーベリーはツツジ科だということが納得できます。先が少しとがった葉は紅葉します。たくさん種類がありますが、食用は主に三種類です。
「これは何ですか?」先日のお稽古での初心者からの質問は、新緑が、花屋さんの言葉では少し(固まってきた)、つまりしっかりしてきた状態の葉のついたブルーベリーの枝を前にした時でした。
5~6ミリほどの艶なしの薄緑の実は、多いところは二十個ほどが先端の葉の下についていました。「目にいいというブルーベリーは知っているけれど、枝についているのを見たのは初めて」だそうで「この枝をこのまま陽に当てておくと食べられるような濃い紫に熟すのかしら」と彼女はしばし見入っていました。それは無理かもしれませんが 挿し木で根付くことは多いようです。
「せっかくだから実を目立たせるために葉をすこし取ってみたら」と私はいけかたをアドバイスしました。
早くもこの季節に小さな実をつける植物は、秋の実とはまた違いこれから先の自然の中の日々を想像させる楽しみがあるような気がします。太陽の光をため込みつつ豊かに成長していきやがて濃い紫の実のなる時を待つことにしましょう。(光加)