今月の花(十月) 秋明菊
秋の高い空の下、揺れている秋明菊。貴船菊とも呼ばれ、京都の貴船に多く見かけたということでこの名があります。
秋明菊は菊の仲間ではなくキンポウゲ科に属します。学名はAnemone hupehensis var. japonica といい、アネモネの仲間です。
キンポウゲ科のラナンキュラスやアネモネは、ひょろりとのびた茎の先に花がついています。この秋明菊も花や葉、茎を観察すると特徴が重なり、なるほど同じキンポウゲ科と納得していただけると思います。
学名にjaponicaとついていますが、日本原産ではなく大陸から中国をへて日本に入ってきたものです。
花は白、ピンク、一重や八重があります。一本の茎から枝分かれした先に花が開くと、賑やかな雰囲気が周りにひろがります。紅葉し始めの樹々の中に置いても佳く、また、豆柿やキササゲ、まだ緑や黄色の皮をかぶったままの実をつけたツルウメモドキ、少し赤くなった雪柳の葉や吾亦紅などと、いけばなでのとり合わせにいけてもお互いが引き立てあいます。
秋明菊は高さは1メートル近くになり、地上近くの大きな葉に対し、上のほうの小さな葉は三箇所さけ目があり茎にじかにつきます。お店では白い花弁が5枚くらいの秋明菊がよく売られていますが、花被片が20以上もあるものが日本には自生しているようで、それはまた違った華やかさがあることでしょう。
私はコロンとした秋明菊の蕾が好きで、いけながらこの位置に蕾がくるといいな、と構えて剣山にいけます。剣山にはささるものの、蕾は思うような位置に止まってくれない時もあります。意に反してくるりとそっぽをむかれてしまうと、あらためてさしなおさなければなりません。細い茎に対して蕾や花が重いのでしょうか。
すらりとした気まぐれな女の子のようだ、と手にすると思いますが、水につけないとすぐに萎れてしまいます。切り口にアルコールをつけると元気を取り戻すとか。多年草で、地下茎で増殖して次の年にも現れるとなれば、なかなかのお嬢さん、とも言えるでしょうか。
秋を彩る個性的な枝や花々が楽しみな季節が巡ってきました。(光加)