今月の花(十二月)蕪
明治生まれの父は蕪が大好きで、蕪の茎や葉、油揚げなどと一緒に炊いたものを(ああ蕪の季節になったな!)と、湯気がまだ少したっている小鉢からおいしそうに食べていたのを思い出します。蕪はどう料理してもおいしいね、というのも父の口癖でした。
日本書紀にも登場し、春の七草のスズナというのは蕪のこと。古くから知られている日本の野菜のひとつです。種類も多く聖護院蕪から作られる千枚漬も楽しみです。
蕪はアフガニスタン原産、また地中海沿岸原産と種類があり、ヨーロッパでは初めは家畜の飼料として使われていたようです。
いけばなの仕事で今まで数えきれないほど行っているフィンランドでこの6月、はじめて蕪料理を頂きました。寒い北欧というイメージがあり、根菜類といえばまずじゃがいもを想像していました。あとで聞くとじゃがいもは1720年代にドイツ方面からフィンランドに入ってきて、スエーデンとプロイセンの戦い【ポメラニアン戦争】(1752-62)の後、より食べられるようになったと言われています。
じゃがいもより前から食べられていた蕪は、日本の蕪と味も似ていて大きさも普通スーパーに並ぶ蕪と変わりません。ただ6月に蕪があったのは北の国だからでしょうか?
フィンランドのヘルシンキでは、日本のお寿司の看板を何軒も見かけました。もともと海と接しているこの国の人たちは、魚を上手に食べます。先日門下のフィンランド人とそのグループで神楽坂の居酒屋に集まりましたが、秋刀魚がおいしいと皆さんお箸できれいに食べていて、合間には蕪の漬物も召し上がっていました。
そしてこの国では今、野菜中心の料理が注目を浴びています。ヘルシー志向はここでもブームになっていて、有名なシェフの野菜レストランもあります。
ソースにカシューナッツや黒い豆、野菜の芽を飾りにちりばめたフィンランドの蕪料理は、日本でもはやるのではと思わせた一品でした。あの味を探しにまたフィンランドに行ってみたいと思います。
蕪といえば、ロシアに「大きな蕪」などの童話もあり、料理や歴史など掘り下げていけば面白いことがたくさん出てきそうで興味は尽きそうもありません。(光加)